JOURNAL

行方ひさこのLOST AND FOUNDなガーデン-BOTANIZE Director 横町健 編-

行方ひさこのLOST AND FOUNDなガーデン-BOTANIZE Director 横町健 編-

2021/06/29

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちに「LOST AND FOUND」からお気に入りのアイテムを選んでいただき、実際にご使用いただいているところを取材させていただいきました。たくさんのものを見て真摯に選んできた彼らだからこその、ものを選ぶ時のこだわりや、ものとの向き合う姿勢を、ブランディングディレクター行方ひさこが掘り下げていきます。 今回は、BOTANIZEディレクター横町健さんをゲストにお迎えしました。健さんと初めてお会いしたのは、参宮橋にあるaneacafe 1号店。仲の良い友人が行きつけで、健さんと親しくしていたのでご紹介いただいたのがきっかけでした。当時、犬と一緒に入れる屋内のカフェは珍しく、愛犬と店内で幸せそうに食事をする常連の方々の笑顔で溢れていたのがとても印象的でした。出会いから5、6年経ちましたが、カフェから始まり次々と新しい分野に活躍の場を広げている健さんが、どんなタイミングでどんな選択をしているのかなど、お話しをお伺いできたらと思います。 健さんが選んだのは「Burgon&Ball ステンレスハンドスコップ」 と「uvex 耐切創手袋 C300 foam」。 健さんが扱う塊根植物は、輸入時に土がついていると検疫を通れないため、根っこごと切られて運ばれてきます。日本に到着してから再び根を張らせるために、育っていた場所と同じような環境下に置きます。根は、とても繊細なので優しく扱うためには指が動きやすいグローブであることがマスト。「uvex 耐切創手袋はコーティング素材で手にぴったりと馴染むので、細かい作業に最適です。ウッドグリップが温かみを演出してくれるスコップは見た目でピンときて選びましたが、握り具合や重さなど様々な庭仕事に合いそうですね。」 学生の頃から飲食店のアルバイトをしていて、接客や人と話すのが好きだったと言う健さん。バイト先の社長に「売り上げを倍にするから、給料を倍にしてくれ」と交渉し、見事に翌月から売り上げを倍にすることに成功したと言います。そこからカフェを経営することを目標にしたそうです。 「カフェを経営するにはイタリアンと和食の勉強をしておくのがいいかなと、掛け持ちで板前とイタリアンの厨房に入って。そこから、魚を捌く日々(笑)。自分の店は自分で設計とデザインをしたいから、専門学校に通い資格をとり、もちろんイラレやキャドを使えるようになった。必要なグラフィックは自分で作れると外注費用もかからないし、お店を始めたばかりの時は売り上げが追いつかないだろうから、外注でグラフィックデザインの仕事を受けてまかなおうと思っていました。」 ハードとソフト全ての知識があった方が人に仕事を頼むにも良いはず、だからとにかく詰め込んだと話してくれました。側から見ているとなんでもさらっとこなしているように見える健さんですが、カフェオーナーの道まで構想10年、慎重に着々と積み上げてきたその努力は相当なものです。愛犬と食事ができるカフェをオープンさせるために、保健所関係もとことん調べ尽くしたそう。好きなことのためだからこそ、納得いくまでリサーチを怠らない、これがより良い結果を生んでいるのだと感じます。 「小学生の頃は、サボテン少年だった。」 今でも変わらない収集癖は小さい頃からで、お父様に買ってもらって以来大好きになったサボテンをとにかく集めていたと言います。自分の部屋は足の踏み場もないくらいサボテンで埋め尽くされている少年時代は、中学生になって色気付いて一旦終了となります(笑)。塊根植物との出会いは知り合いの事務所。「見た瞬間に、サボテン少年だった頃に一瞬でフラッシュバックして、その場で購入させてもらったんです。そこから調べまくり、1ヶ月で200鉢くらい買い込むほどのめり込んだ。事務所に置ききれなくなって、バルコニーのある事務所に引っ越すことに。好きすぎて並べてインスタグラムにアップしたら、買いたいとメッセージが来るようになって。試しに売ってみたら、1分で100万円くらい売れた!そこから、実店舗を作ってみようと店舗にもなる事務所に引っ越した。」 これが5、6年前のこと。はじめはビジネスになるとは思いもせずに、好きで好きでたまらなくて写真を撮っていただけ。でも、これが仕事に繋がっていくのは“好き”という情熱、そしてその“好き”を形にするために必要なのが周到なリサーチなのでしょう。現在、植物に合うように鉢の開発にも力を入れていて、ここ数年作家さんと共にお取り組みを進めているそう。健さんが発表する鉢は、どれも他にはあまり見かけないものが多く、ファンたちが次の作品の完成を待ち望んでいます。「植木鉢のみを飾る文化を作りたかった。」 陶芸の世界で鉢というと、底に穴が開いていることもあり、価格も含めてそこまで重要視されているものではありません。陶芸の歴史の中で、価値が高いとされているのは茶器や酒器などが大半です。「植木鉢の文化を変えたかった。植木鉢だからといって価値が低く見られるようなものではなく、実用品としてだけでなく、ただ飾って眺めるものとしても存在を高められるようにしたい。」アートキュレターの顔も持つ健さんは、今後アート×植物を広めていくことに注力していきたいと話してくれました。そもそも別々の時期に立ち上げた植物とアートの事業ですが、それを一緒にしていけるよう動いていくそう。鉢にアートを施した、他にはないものがたくさん生み出されそうです。ほとんどの店舗の内装設計も自ら手掛けられてきましたが、今後は若手のクリエーターとのコラボレーションなども楽しめたらと思いを膨らませているようです。 世界中から集められた、流行に左右されることなく常に確かな技術によって作り続けられているアイテムたちがセレクトされた「LOST AND FOUND」。“忘れられてしまった大切なものたちが見つかる場所” という意味のこのジェネラルストアは、様々な業界で活躍する人たちをはじめ、多くの方々の暮らしを豊かにしてくれる実用性と必然性を兼ね備えたアイテムたちをご提案していきます。今回、お話しをお伺いさせていただいた健さんが、ものを選ぶ時に大切にしていることは、「それを見るだけで気持ちが上がる、気持ちが上がるとパフォーマンスが上がる」 こと。機能性はもちろん、テンションの上がるビジュアルも重要な要素だと言います。 「道具も服も車も、自分がかっこいいなと思えるものを使うことで気持ちが上がる。そのほうがいい仕事ができるに違いないから。」  好きなことをとことん追求し楽しみながら、自分にしかできない自分だけの仕事を作っていく姿は、多くの人のこれからにお手本となるtipsがたくさんあるのではないでしょうか。 <記事内紹介商品>   横町健/aneaken @aneaken...

行方ひさこのLOST AND FOUNDなガーデン-BOTANIZE Director 横町健 編-

2021/06/29

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちに「LOST AND FOUND」からお気に入りのアイテムを選んでいただき、実際にご使用いただいているところを取材させていただいきました。たくさんのものを見て真摯に選んできた彼らだからこその、ものを選ぶ時のこだわりや、ものとの向き合う姿勢を、ブランディングディレクター行方ひさこが掘り下げていきます。 今回は、BOTANIZEディレクター横町健さんをゲストにお迎えしました。健さんと初めてお会いしたのは、参宮橋にあるaneacafe 1号店。仲の良い友人が行きつけで、健さんと親しくしていたのでご紹介いただいたのがきっかけでした。当時、犬と一緒に入れる屋内のカフェは珍しく、愛犬と店内で幸せそうに食事をする常連の方々の笑顔で溢れていたのがとても印象的でした。出会いから5、6年経ちましたが、カフェから始まり次々と新しい分野に活躍の場を広げている健さんが、どんなタイミングでどんな選択をしているのかなど、お話しをお伺いできたらと思います。 健さんが選んだのは「Burgon&Ball ステンレスハンドスコップ」 と「uvex 耐切創手袋 C300 foam」。 健さんが扱う塊根植物は、輸入時に土がついていると検疫を通れないため、根っこごと切られて運ばれてきます。日本に到着してから再び根を張らせるために、育っていた場所と同じような環境下に置きます。根は、とても繊細なので優しく扱うためには指が動きやすいグローブであることがマスト。「uvex 耐切創手袋はコーティング素材で手にぴったりと馴染むので、細かい作業に最適です。ウッドグリップが温かみを演出してくれるスコップは見た目でピンときて選びましたが、握り具合や重さなど様々な庭仕事に合いそうですね。」 学生の頃から飲食店のアルバイトをしていて、接客や人と話すのが好きだったと言う健さん。バイト先の社長に「売り上げを倍にするから、給料を倍にしてくれ」と交渉し、見事に翌月から売り上げを倍にすることに成功したと言います。そこからカフェを経営することを目標にしたそうです。 「カフェを経営するにはイタリアンと和食の勉強をしておくのがいいかなと、掛け持ちで板前とイタリアンの厨房に入って。そこから、魚を捌く日々(笑)。自分の店は自分で設計とデザインをしたいから、専門学校に通い資格をとり、もちろんイラレやキャドを使えるようになった。必要なグラフィックは自分で作れると外注費用もかからないし、お店を始めたばかりの時は売り上げが追いつかないだろうから、外注でグラフィックデザインの仕事を受けてまかなおうと思っていました。」 ハードとソフト全ての知識があった方が人に仕事を頼むにも良いはず、だからとにかく詰め込んだと話してくれました。側から見ているとなんでもさらっとこなしているように見える健さんですが、カフェオーナーの道まで構想10年、慎重に着々と積み上げてきたその努力は相当なものです。愛犬と食事ができるカフェをオープンさせるために、保健所関係もとことん調べ尽くしたそう。好きなことのためだからこそ、納得いくまでリサーチを怠らない、これがより良い結果を生んでいるのだと感じます。 「小学生の頃は、サボテン少年だった。」 今でも変わらない収集癖は小さい頃からで、お父様に買ってもらって以来大好きになったサボテンをとにかく集めていたと言います。自分の部屋は足の踏み場もないくらいサボテンで埋め尽くされている少年時代は、中学生になって色気付いて一旦終了となります(笑)。塊根植物との出会いは知り合いの事務所。「見た瞬間に、サボテン少年だった頃に一瞬でフラッシュバックして、その場で購入させてもらったんです。そこから調べまくり、1ヶ月で200鉢くらい買い込むほどのめり込んだ。事務所に置ききれなくなって、バルコニーのある事務所に引っ越すことに。好きすぎて並べてインスタグラムにアップしたら、買いたいとメッセージが来るようになって。試しに売ってみたら、1分で100万円くらい売れた!そこから、実店舗を作ってみようと店舗にもなる事務所に引っ越した。」 これが5、6年前のこと。はじめはビジネスになるとは思いもせずに、好きで好きでたまらなくて写真を撮っていただけ。でも、これが仕事に繋がっていくのは“好き”という情熱、そしてその“好き”を形にするために必要なのが周到なリサーチなのでしょう。現在、植物に合うように鉢の開発にも力を入れていて、ここ数年作家さんと共にお取り組みを進めているそう。健さんが発表する鉢は、どれも他にはあまり見かけないものが多く、ファンたちが次の作品の完成を待ち望んでいます。「植木鉢のみを飾る文化を作りたかった。」 陶芸の世界で鉢というと、底に穴が開いていることもあり、価格も含めてそこまで重要視されているものではありません。陶芸の歴史の中で、価値が高いとされているのは茶器や酒器などが大半です。「植木鉢の文化を変えたかった。植木鉢だからといって価値が低く見られるようなものではなく、実用品としてだけでなく、ただ飾って眺めるものとしても存在を高められるようにしたい。」アートキュレターの顔も持つ健さんは、今後アート×植物を広めていくことに注力していきたいと話してくれました。そもそも別々の時期に立ち上げた植物とアートの事業ですが、それを一緒にしていけるよう動いていくそう。鉢にアートを施した、他にはないものがたくさん生み出されそうです。ほとんどの店舗の内装設計も自ら手掛けられてきましたが、今後は若手のクリエーターとのコラボレーションなども楽しめたらと思いを膨らませているようです。 世界中から集められた、流行に左右されることなく常に確かな技術によって作り続けられているアイテムたちがセレクトされた「LOST AND FOUND」。“忘れられてしまった大切なものたちが見つかる場所” という意味のこのジェネラルストアは、様々な業界で活躍する人たちをはじめ、多くの方々の暮らしを豊かにしてくれる実用性と必然性を兼ね備えたアイテムたちをご提案していきます。今回、お話しをお伺いさせていただいた健さんが、ものを選ぶ時に大切にしていることは、「それを見るだけで気持ちが上がる、気持ちが上がるとパフォーマンスが上がる」 こと。機能性はもちろん、テンションの上がるビジュアルも重要な要素だと言います。 「道具も服も車も、自分がかっこいいなと思えるものを使うことで気持ちが上がる。そのほうがいい仕事ができるに違いないから。」  好きなことをとことん追求し楽しみながら、自分にしかできない自分だけの仕事を作っていく姿は、多くの人のこれからにお手本となるtipsがたくさんあるのではないでしょうか。 <記事内紹介商品>   横町健/aneaken @aneaken...

小林和人が選んだもの「コームの話」

小林和人が選んだもの「コームの話」

2021/06/09

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。 今回⼩林さんが話してくれたのは、KENT の「メンズ 折畳式ポケットクリップ付コーム」についてです。 演劇的な瞬間が、日常に抑揚を生む シャツのポケットに刺したコームを取ってサッと、とかす。そういう、ちょっとミュージカル的な仕草って消えつつあるじゃないですか。その“キザな所作”が失われつつあることに、寂しさを覚える今⽇この頃。 演劇的な瞬間が差し込まれることで、平坦な⽇常にちょっとした抑揚が⽣まれたら良いなと。指パッチンまではしませんが(笑)。 あと、⽇頃から思うのが、⾝だしなみがエスカレートすると気合⼊れた⾼校球児みたいに眉⽑整え始めちゃったりして、あそこまでいっちゃうと逆に引いちゃうんですよね。さじ加減が肝⼼というか。逆に髭はいくらでも⼿を⼊れていいと個⼈的には思っています。眉⽑を整えるくらいなら、このコームで髭をグルーミングして欲しいですね。(そう⾔って髭をとかす仕草をする⼩林さん) KENT という歴史あるブランドは、コームに刻まれた⽂字の書体とか、クラシックな感じがいい。コーム⾃体、昔からあるような佇まいなんですよね。頑なに、自分のスタイルを守っていて。物選びにおいては、こういった⼀貫した美意識の軸を持つメーカーに強く惹かれますね。ブランドの価値というのは掘り下げると結局そこに⾏き着くと思うんですよね。 折りたたみ欲が成仏する ポケットコームといえば KENT という認識は持ってはいましたが、この⼆つ折りのコームの存在は新鮮でした。折りたためるという点が、⼀番気に⼊っていますね。実は折りたたみ好きなんです。“折りたたみ”とか“⼊れ⼦”とか…そういうギミックが好き。⼦供の頃、筆箱に何⾯あるかを友達と競ったりしていましたよね。鉛筆削りがあったり、消しゴム⼊れがあったり…そういう隠された仕組みに惹かれます。って⾔っても、このコームの折り畳み機構はバレバレですけどね(笑)。 昔、アニメの超合⾦の玩具を親に買ってもらったら、廉価版だったため変型しないことが後で分かってガッカリしたことがあるんですが、この KENT の折り畳みポケットコームがあれば、その時満たされなかった「折りたたみ欲」が成仏しそうです。 物を選ぶとき、「⽣活に必要不可⽋かどうか」という基準ももちろん⼤事ですが、ささやかな個⼈的欲求を満たすものだったり、⽇常の中のちょっとしたアクセントとなるような・・・、そんな視点も⼤事なのかもしれない。コームを使っている⽗の所作を想像して、イケてる!とニヤケテしまった⽅、⽗の⽇の贈り物にしてみては? <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

小林和人が選んだもの「コームの話」

2021/06/09

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。 今回⼩林さんが話してくれたのは、KENT の「メンズ 折畳式ポケットクリップ付コーム」についてです。 演劇的な瞬間が、日常に抑揚を生む シャツのポケットに刺したコームを取ってサッと、とかす。そういう、ちょっとミュージカル的な仕草って消えつつあるじゃないですか。その“キザな所作”が失われつつあることに、寂しさを覚える今⽇この頃。 演劇的な瞬間が差し込まれることで、平坦な⽇常にちょっとした抑揚が⽣まれたら良いなと。指パッチンまではしませんが(笑)。 あと、⽇頃から思うのが、⾝だしなみがエスカレートすると気合⼊れた⾼校球児みたいに眉⽑整え始めちゃったりして、あそこまでいっちゃうと逆に引いちゃうんですよね。さじ加減が肝⼼というか。逆に髭はいくらでも⼿を⼊れていいと個⼈的には思っています。眉⽑を整えるくらいなら、このコームで髭をグルーミングして欲しいですね。(そう⾔って髭をとかす仕草をする⼩林さん) KENT という歴史あるブランドは、コームに刻まれた⽂字の書体とか、クラシックな感じがいい。コーム⾃体、昔からあるような佇まいなんですよね。頑なに、自分のスタイルを守っていて。物選びにおいては、こういった⼀貫した美意識の軸を持つメーカーに強く惹かれますね。ブランドの価値というのは掘り下げると結局そこに⾏き着くと思うんですよね。 折りたたみ欲が成仏する ポケットコームといえば KENT という認識は持ってはいましたが、この⼆つ折りのコームの存在は新鮮でした。折りたためるという点が、⼀番気に⼊っていますね。実は折りたたみ好きなんです。“折りたたみ”とか“⼊れ⼦”とか…そういうギミックが好き。⼦供の頃、筆箱に何⾯あるかを友達と競ったりしていましたよね。鉛筆削りがあったり、消しゴム⼊れがあったり…そういう隠された仕組みに惹かれます。って⾔っても、このコームの折り畳み機構はバレバレですけどね(笑)。 昔、アニメの超合⾦の玩具を親に買ってもらったら、廉価版だったため変型しないことが後で分かってガッカリしたことがあるんですが、この KENT の折り畳みポケットコームがあれば、その時満たされなかった「折りたたみ欲」が成仏しそうです。 物を選ぶとき、「⽣活に必要不可⽋かどうか」という基準ももちろん⼤事ですが、ささやかな個⼈的欲求を満たすものだったり、⽇常の中のちょっとしたアクセントとなるような・・・、そんな視点も⼤事なのかもしれない。コームを使っている⽗の所作を想像して、イケてる!とニヤケテしまった⽅、⽗の⽇の贈り物にしてみては? <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

行方ひさこのNIKKO LOST AND FOUNDなキッチン -unis薬師神 陸シェフ後編-

行方ひさこのNIKKO LOST AND FOUNDなキッチン -unis薬師神 陸シェフ後編-

2021/05/18

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちに事前に「LOST AND FOUND」からアイテム選んでいただき、実際に使われた実感や感想などをお伺いしていきます。たくさんのものを見て、選んできた彼らだからこその物を選ぶ時のこだわりなど、ものとの向き合う姿勢をブランディングディレクター行方ひさこが掘り下げていきます。 前回はunis薬師神シェフをゲストにお迎えし 事前に選んでいただいたREMASTERD「7cmタンブラー」&「ティースプーン」にふさわしい一品、「そら豆とつぶ貝のミモレットフラン」を作っていただきました。どんなシチュエーションにも馴染むREMASTERDのアイテムたちは、日々の時間の中で使い手と一緒に育っていきます。シンプルだからこそのその余白を活かした様々な使い方を楽しんでいただけたら。 初夏の爽やかな風を運んでくれる洋風茶碗蒸しのようなこちらの一品は、特別な材料がなくても簡単に作れるもの。「ベースのミモレットフランは、様々な食材に相性がいいので、季節ごとに香ばしくソテーしたガルニを合わせて試してみてください。」と薬師神シェフからのメッセージ。プロのレシピをマスターして、ご自宅で楽しんでみてはいかがでしょう。 そら豆とつぶ貝のミモレットフランの作り方 ■ミモレットのフランを作る 1. 軽く温めたチキンブイヨンとミモレットチーズをミキサーに入れしっかりと撹拌し溶かす。 2. あら熱が取れたところに全卵を加え混ぜ合わせ、濾す。 ■そら豆のフォームを作る1. 材料を全てミキサーに入れしっかりと撹拌し、濾す。 2. 60度に温め、ハンドブレンダーで泡立てる。■仕上げ1. 器にフランのベースを流し、90度のスチームで20分火を通す。2. 熱したフライパンにそら豆と一口大のつぶ貝を強火でソテーする。 3. 薄口醤油で香ばしさをつける。 4. 蒸しあがったフランの上に具材(ガルニチュール)をのせ、そら豆のフォームを載せれば完成。 材料 ■ミモレットのフランチキンブイヨン 100gミモレットチーズ 25g全卵 30g ■そら豆のフォームむきそら豆 60g牛乳 140g35%生クリーム60g塩 2g■ガルニチュールツブ貝...

行方ひさこのNIKKO LOST AND FOUNDなキッチン -unis薬師神 陸シェフ後編-

2021/05/18

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちに事前に「LOST AND FOUND」からアイテム選んでいただき、実際に使われた実感や感想などをお伺いしていきます。たくさんのものを見て、選んできた彼らだからこその物を選ぶ時のこだわりなど、ものとの向き合う姿勢をブランディングディレクター行方ひさこが掘り下げていきます。 前回はunis薬師神シェフをゲストにお迎えし 事前に選んでいただいたREMASTERD「7cmタンブラー」&「ティースプーン」にふさわしい一品、「そら豆とつぶ貝のミモレットフラン」を作っていただきました。どんなシチュエーションにも馴染むREMASTERDのアイテムたちは、日々の時間の中で使い手と一緒に育っていきます。シンプルだからこそのその余白を活かした様々な使い方を楽しんでいただけたら。 初夏の爽やかな風を運んでくれる洋風茶碗蒸しのようなこちらの一品は、特別な材料がなくても簡単に作れるもの。「ベースのミモレットフランは、様々な食材に相性がいいので、季節ごとに香ばしくソテーしたガルニを合わせて試してみてください。」と薬師神シェフからのメッセージ。プロのレシピをマスターして、ご自宅で楽しんでみてはいかがでしょう。 そら豆とつぶ貝のミモレットフランの作り方 ■ミモレットのフランを作る 1. 軽く温めたチキンブイヨンとミモレットチーズをミキサーに入れしっかりと撹拌し溶かす。 2. あら熱が取れたところに全卵を加え混ぜ合わせ、濾す。 ■そら豆のフォームを作る1. 材料を全てミキサーに入れしっかりと撹拌し、濾す。 2. 60度に温め、ハンドブレンダーで泡立てる。■仕上げ1. 器にフランのベースを流し、90度のスチームで20分火を通す。2. 熱したフライパンにそら豆と一口大のつぶ貝を強火でソテーする。 3. 薄口醤油で香ばしさをつける。 4. 蒸しあがったフランの上に具材(ガルニチュール)をのせ、そら豆のフォームを載せれば完成。 材料 ■ミモレットのフランチキンブイヨン 100gミモレットチーズ 25g全卵 30g ■そら豆のフォームむきそら豆 60g牛乳 140g35%生クリーム60g塩 2g■ガルニチュールツブ貝...

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

2021/05/13

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回⼩林さんが話してくれたのは、Belmont の「ファイヤースクエアケトル」についてです。 絵になるヤカンですよね。 ありそうでないヤカンを探していたんです。そしたら Belmontという新潟のアウトドア製品のメーカーのヤカンにたどり着いた。ボディからハンドルまで全てステンレスの鏡面仕上げが美しく、⼀⽬で気に⼊りました。 物と形の必然性が直結している“物” ヤカンて、結構場所を取るもの。でもこれはハンドルを折りたためて、重ねて収納もできる。本棚にしまいたくなるくらい。それはまずいか(笑)。 このケトル、初めて⾒る姿ではあれど、どこかの軍の装備品にありそうな…。独⾃のキャラクターを感じながらも、同時に普遍性を感じるんです。それはなぜかというと、そのもの⾃体が必然性を体現しているから。この形もきっと奇をてらったわけではなく、おそらく収納性と熱効率の両立を追求することによって⽣まれた姿なんじゃないかなと、想像できます。そういう物の形と必然性が直結している“物”を選びたいですね。 視点を変えることでさらに光る物 ⼀番気に⼊っているのは、つまみの部分。バネのようにカチャっと折りたためるようになっているのですが、持ち⼿だけが削り出しの真鍮なんです。ソリッドな感じで。ディティールのちょっとしたところで印象が⼤きく違ってきますよね。機能⾯でいうと、底⾯積が広く確保されているので、早く沸くというメリットもちゃんとあります。中に茶こしが付いているので、お茶っ葉を⼊れて煮出し、そのまま冷蔵庫で冷やしても良いですよね。 実はこれ、もともと家庭用として販売されている既存のヤカンをキャンプ用にモディファイした製品なんですが、それをまた敢えて家で使うものとして捉え直すというのがLOST AND FOUND的な道具選びの視点かなと思っています。そうやって視点を変えることでさらに光る物って、世の中には結構あるはずなんです。特にキャンプ⽤品には、掘っていくと⾒⽴て次第で家使いにも良い物がたくさんあるんじゃないかな。 ヤカンて皆さん持っていると思うんですが、これは既に持っているヤカンとは競合しないはず。だから贈り物にもすごくいいなと。サブ的な位置付けの、「⼆つ⽬のヤカン」としても使えると思います。でも、ハンドルは熱くなるので布で持った⽅が良いですよ。 「あり方が自然な物、もともと存在していたかのような顔をしている物を選びたい」これは小林さんの物選びの基準のひとつだそうです。ファイヤースクエアケトルは、考え抜かれた機能性を携え、しかしどこの食卓にもすっと馴染んでしまいそうな佇まいで、私たちの生活を彩ってくれるはず。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko...

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

2021/05/13

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回⼩林さんが話してくれたのは、Belmont の「ファイヤースクエアケトル」についてです。 絵になるヤカンですよね。 ありそうでないヤカンを探していたんです。そしたら Belmontという新潟のアウトドア製品のメーカーのヤカンにたどり着いた。ボディからハンドルまで全てステンレスの鏡面仕上げが美しく、⼀⽬で気に⼊りました。 物と形の必然性が直結している“物” ヤカンて、結構場所を取るもの。でもこれはハンドルを折りたためて、重ねて収納もできる。本棚にしまいたくなるくらい。それはまずいか(笑)。 このケトル、初めて⾒る姿ではあれど、どこかの軍の装備品にありそうな…。独⾃のキャラクターを感じながらも、同時に普遍性を感じるんです。それはなぜかというと、そのもの⾃体が必然性を体現しているから。この形もきっと奇をてらったわけではなく、おそらく収納性と熱効率の両立を追求することによって⽣まれた姿なんじゃないかなと、想像できます。そういう物の形と必然性が直結している“物”を選びたいですね。 視点を変えることでさらに光る物 ⼀番気に⼊っているのは、つまみの部分。バネのようにカチャっと折りたためるようになっているのですが、持ち⼿だけが削り出しの真鍮なんです。ソリッドな感じで。ディティールのちょっとしたところで印象が⼤きく違ってきますよね。機能⾯でいうと、底⾯積が広く確保されているので、早く沸くというメリットもちゃんとあります。中に茶こしが付いているので、お茶っ葉を⼊れて煮出し、そのまま冷蔵庫で冷やしても良いですよね。 実はこれ、もともと家庭用として販売されている既存のヤカンをキャンプ用にモディファイした製品なんですが、それをまた敢えて家で使うものとして捉え直すというのがLOST AND FOUND的な道具選びの視点かなと思っています。そうやって視点を変えることでさらに光る物って、世の中には結構あるはずなんです。特にキャンプ⽤品には、掘っていくと⾒⽴て次第で家使いにも良い物がたくさんあるんじゃないかな。 ヤカンて皆さん持っていると思うんですが、これは既に持っているヤカンとは競合しないはず。だから贈り物にもすごくいいなと。サブ的な位置付けの、「⼆つ⽬のヤカン」としても使えると思います。でも、ハンドルは熱くなるので布で持った⽅が良いですよ。 「あり方が自然な物、もともと存在していたかのような顔をしている物を選びたい」これは小林さんの物選びの基準のひとつだそうです。ファイヤースクエアケトルは、考え抜かれた機能性を携え、しかしどこの食卓にもすっと馴染んでしまいそうな佇まいで、私たちの生活を彩ってくれるはず。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko...

行方ひさこのLOST AND FOUNDなキッチン -unis 薬師神 陸シェフ 前編

行方ひさこのLOST AND FOUNDなキッチン -unis 薬師神 陸シェフ 前編

2021/05/13

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちが「LOST AND FOUND」からアイテムを選び、そこに彩りを添えてくれます。たくさんのものを見て、選んできた彼らだからこその物を選ぶ時のこだわりや、ものとの向き合う姿勢を行方ひさこが掘り下げていきます。 今回は食のプロ、unisの薬師神 陸さんをゲストにお迎えしました。薬師神さんとは彼の独立を機にやりとりをするようになり、仕事も、生産者さんを一緒にまわったりもする間柄。独立し自身のお店を構えたばかりの彼だからこそ、この企画にふさわしいと、お声がけさせていただきました。 彼が迷わず選んだのは、REMASTERDの「7cmタンブラー」&「ティースプーン」。初回にふさわしくコース1品目のアペタイザーとしての器を選んでくれました。「多くの品数を提供する僕のお店では、このくらいのコンパクトなサイズが一皿の容量にちょうどよいと思って選びました。そして何よりどの季節でも合いそうだから。」 「unis」のコースは、全11皿からなる贅沢なコースです。 「完成されすぎた美しすぎる器は食事を選んでしまう。だから僕は、足し算ができる余白のある器を選びます。」 昨年オープンしたばかりの薬師神さんのレストラン「unis」のコンセプトは、「無垢」の世界観。大理石、木、土、革、和紙、陶磁器……できるだけ天然素材を使って内装を作り上げていったそう。店内の照明も時間によって自在に切り替えています。「明かりを楽しむというより影を楽しむ。柔らかい影を作るというのも大切な『無垢」の世界観だと思うんです。」  普段彼がお店のために選ぶ器は、完全にオリジナルで製作されたもの。コースの構成をある程度固めた後にコンセプトを作家さんに伝え、何度もディスカッションと試作を重ねて作り上げていったといいます。今まで数々の地方を訪れた際に出会った作家さんたちのそれぞれのデザインと技術の特性を活かしつつ、伝統的な柄を入れたり地方の特性を入れてみたり。緊急事態宣言でオープン日が後ろ倒しになった分、時間をかけてじっくりと向き合い、可能性を探っていったそう。とはいえ、奇をてらったような器たちではなく、そのほとんどが白。「白と言っても艶のあるものやマットなもの、そしてその土地土地や素材によって『白」という色も複数ある。そのあたりも『無垢」として活かしていきたかった。」と、それも大切にしている薬師神的ナチュラルティ=「無垢」の世界観の表現の1つです。そんな「無垢」な世界観にこだわったのは、完成してしまった空間では余白がなく四季を感じられないから。「年4回撮り下ろす映像演出によるデジタルなコミュニケーションで食材と共に季節感を感じてもらいたい。」と話してくれました。インタビューをさせていただいたこの日は、今年の春の屋久島の深い緑が店内に彩りとしっとりとした空気を添えていました。プライベートでものを選ぶ時も、完全に一目惚れタイプ。佇まいや空気感に気持ちを持っていかれることが多いそう。「一目惚れの相手をどんどん深掘りして、他にどんなものがあるのか、できるのかを探っていくのが楽しい(笑)。」   ものを選ぶ時に薬師神さんが大切にしていることは、「足し算ができる余白がある」こと。そこになにか足すことで完成する世界観は、決められたゴールがあるよりも何倍もの可能性が広がるはず。自分たちでは決して作り出すことができない天然の素材感を大切にしながら、というところにも薬師神さんの自然と対峙する姿勢が垣間見える気がします。先が読みづらい今の時期のコミュニケーションに大切なことは、いかに楽しんでスマートに余白を活かしきるかということではないでしょうか。薬師神さんが選び、彩りを添えてくれた今回の7cmタンブラーとスプーン。さりげないサイズと形状、そして重さまでもが絶妙にしっくりとくるアイテムです。前菜からデザートまで料理を選ばず、その余白とポテンシャルで料理をより引き立ててくれることでしょう。 器を彩るために作ってくれたメニューは、「そら豆とつぶ貝のミモレットフラン」。実際にこの時期にお店で提供されているメニューです。季節を感じられるそら豆の香りとミモレットチーズの深いコク、つるんとした口溶けの中につぶ貝の歯応えが楽しい一品です。詳しいレシピは次回公開予定! <記事内紹介商品> 薬師神 陸 Chef / Curinary Producer @rikuyakusijin1988年愛媛県生まれ。2008年辻調理師専門学校フランス料理講師としてスタートし、教育からテレビ料理監修など幅広く活躍。 2014年から予約困難『SUGALABO』の立ち上げから須賀洋介シェフの右腕として同店を支えた。2019年に独立し、2020年食のインキュベーション事業「Social Kitchen」と併設するレストラン「unis」で新しい料理人の働き方を自ら体現する。全国の600以上を超える生産者とのコネクションを生かし〝食のリテラシーを磨く〟をコンセプトに、商品開発、メニュー監修など多彩に活動する。unis東京都港区虎ノ門1-23-3 虎ノ門ヒルズガーデンハウス1FSocial Kitchen TORANOMON内https://unis-anniversary.com行方ひさこ@hisakonamekatainterview & text by Hisako Namekata ~~photo by Naoki...

行方ひさこのLOST AND FOUNDなキッチン -unis 薬師神 陸シェフ 前編

2021/05/13

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちが「LOST AND FOUND」からアイテムを選び、そこに彩りを添えてくれます。たくさんのものを見て、選んできた彼らだからこその物を選ぶ時のこだわりや、ものとの向き合う姿勢を行方ひさこが掘り下げていきます。 今回は食のプロ、unisの薬師神 陸さんをゲストにお迎えしました。薬師神さんとは彼の独立を機にやりとりをするようになり、仕事も、生産者さんを一緒にまわったりもする間柄。独立し自身のお店を構えたばかりの彼だからこそ、この企画にふさわしいと、お声がけさせていただきました。 彼が迷わず選んだのは、REMASTERDの「7cmタンブラー」&「ティースプーン」。初回にふさわしくコース1品目のアペタイザーとしての器を選んでくれました。「多くの品数を提供する僕のお店では、このくらいのコンパクトなサイズが一皿の容量にちょうどよいと思って選びました。そして何よりどの季節でも合いそうだから。」 「unis」のコースは、全11皿からなる贅沢なコースです。 「完成されすぎた美しすぎる器は食事を選んでしまう。だから僕は、足し算ができる余白のある器を選びます。」 昨年オープンしたばかりの薬師神さんのレストラン「unis」のコンセプトは、「無垢」の世界観。大理石、木、土、革、和紙、陶磁器……できるだけ天然素材を使って内装を作り上げていったそう。店内の照明も時間によって自在に切り替えています。「明かりを楽しむというより影を楽しむ。柔らかい影を作るというのも大切な『無垢」の世界観だと思うんです。」  普段彼がお店のために選ぶ器は、完全にオリジナルで製作されたもの。コースの構成をある程度固めた後にコンセプトを作家さんに伝え、何度もディスカッションと試作を重ねて作り上げていったといいます。今まで数々の地方を訪れた際に出会った作家さんたちのそれぞれのデザインと技術の特性を活かしつつ、伝統的な柄を入れたり地方の特性を入れてみたり。緊急事態宣言でオープン日が後ろ倒しになった分、時間をかけてじっくりと向き合い、可能性を探っていったそう。とはいえ、奇をてらったような器たちではなく、そのほとんどが白。「白と言っても艶のあるものやマットなもの、そしてその土地土地や素材によって『白」という色も複数ある。そのあたりも『無垢」として活かしていきたかった。」と、それも大切にしている薬師神的ナチュラルティ=「無垢」の世界観の表現の1つです。そんな「無垢」な世界観にこだわったのは、完成してしまった空間では余白がなく四季を感じられないから。「年4回撮り下ろす映像演出によるデジタルなコミュニケーションで食材と共に季節感を感じてもらいたい。」と話してくれました。インタビューをさせていただいたこの日は、今年の春の屋久島の深い緑が店内に彩りとしっとりとした空気を添えていました。プライベートでものを選ぶ時も、完全に一目惚れタイプ。佇まいや空気感に気持ちを持っていかれることが多いそう。「一目惚れの相手をどんどん深掘りして、他にどんなものがあるのか、できるのかを探っていくのが楽しい(笑)。」   ものを選ぶ時に薬師神さんが大切にしていることは、「足し算ができる余白がある」こと。そこになにか足すことで完成する世界観は、決められたゴールがあるよりも何倍もの可能性が広がるはず。自分たちでは決して作り出すことができない天然の素材感を大切にしながら、というところにも薬師神さんの自然と対峙する姿勢が垣間見える気がします。先が読みづらい今の時期のコミュニケーションに大切なことは、いかに楽しんでスマートに余白を活かしきるかということではないでしょうか。薬師神さんが選び、彩りを添えてくれた今回の7cmタンブラーとスプーン。さりげないサイズと形状、そして重さまでもが絶妙にしっくりとくるアイテムです。前菜からデザートまで料理を選ばず、その余白とポテンシャルで料理をより引き立ててくれることでしょう。 器を彩るために作ってくれたメニューは、「そら豆とつぶ貝のミモレットフラン」。実際にこの時期にお店で提供されているメニューです。季節を感じられるそら豆の香りとミモレットチーズの深いコク、つるんとした口溶けの中につぶ貝の歯応えが楽しい一品です。詳しいレシピは次回公開予定! <記事内紹介商品> 薬師神 陸 Chef / Curinary Producer @rikuyakusijin1988年愛媛県生まれ。2008年辻調理師専門学校フランス料理講師としてスタートし、教育からテレビ料理監修など幅広く活躍。 2014年から予約困難『SUGALABO』の立ち上げから須賀洋介シェフの右腕として同店を支えた。2019年に独立し、2020年食のインキュベーション事業「Social Kitchen」と併設するレストラン「unis」で新しい料理人の働き方を自ら体現する。全国の600以上を超える生産者とのコネクションを生かし〝食のリテラシーを磨く〟をコンセプトに、商品開発、メニュー監修など多彩に活動する。unis東京都港区虎ノ門1-23-3 虎ノ門ヒルズガーデンハウス1FSocial Kitchen TORANOMON内https://unis-anniversary.com行方ひさこ@hisakonamekatainterview & text by Hisako Namekata ~~photo by Naoki...