時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。
そんなプロたちに「LOST AND FOUND」からお気に入りのアイテムを選んでいただき、実際にご使用いただいているところを取材させていただいきました。
たくさんのものを見て真摯に選んできた彼らだからこその、ものを選ぶ時のこだわりや、ものとの向き合う姿勢を、ブランディングディレクター行方ひさこが掘り下げていきます。
今回は、BOTANIZEディレクター横町健さんをゲストにお迎えしました。
健さんと初めてお会いしたのは、参宮橋にあるaneacafe 1号店。仲の良い友人が行きつけで、健さんと親しくしていたのでご紹介いただいたのがきっかけでした。
当時、犬と一緒に入れる屋内のカフェは珍しく、愛犬と店内で幸せそうに食事をする常連の方々の笑顔で溢れていたのがとても印象的でした。
出会いから5、6年経ちましたが、カフェから始まり次々と新しい分野に活躍の場を広げている健さんが、どんなタイミングでどんな選択をしているのかなど、お話しをお伺いできたらと思います。
健さんが選んだのは「Burgon&Ball ステンレスハンドスコップ」 と「uvex 耐切創手袋 C300 foam」。
健さんが扱う塊根植物は、輸入時に土がついていると検疫を通れないため、根っこごと切られて運ばれてきます。日本に到着してから再び根を張らせるために、育っていた場所と同じような環境下に置きます。根は、とても繊細なので優しく扱うためには指が動きやすいグローブであることがマスト。
「uvex 耐切創手袋はコーティング素材で手にぴったりと馴染むので、細かい作業に最適です。ウッドグリップが温かみを演出してくれるスコップは見た目でピンときて選びましたが、握り具合や重さなど様々な庭仕事に合いそうですね。」
学生の頃から飲食店のアルバイトをしていて、接客や人と話すのが好きだったと言う健さん。バイト先の社長に「売り上げを倍にするから、給料を倍にしてくれ」と交渉し、見事に翌月から売り上げを倍にすることに成功したと言います。そこからカフェを経営することを目標にしたそうです。
「カフェを経営するにはイタリアンと和食の勉強をしておくのがいいかなと、掛け持ちで板前とイタリアンの厨房に入って。そこから、魚を捌く日々(笑)。自分の店は自分で設計とデザインをしたいから、専門学校に通い資格をとり、もちろんイラレやキャドを使えるようになった。必要なグラフィックは自分で作れると外注費用もかからないし、お店を始めたばかりの時は売り上げが追いつかないだろうから、外注でグラフィックデザインの仕事を受けてまかなおうと思っていました。」
ハードとソフト全ての知識があった方が人に仕事を頼むにも良いはず、だからとにかく詰め込んだと話してくれました。側から見ているとなんでもさらっとこなしているように見える健さんですが、カフェオーナーの道まで構想10年、慎重に着々と積み上げてきたその努力は相当なものです。愛犬と食事ができるカフェをオープンさせるために、保健所関係もとことん調べ尽くしたそう。好きなことのためだからこそ、納得いくまでリサーチを怠らない、これがより良い結果を生んでいるのだと感じます。
「小学生の頃は、サボテン少年だった。」
今でも変わらない収集癖は小さい頃からで、お父様に買ってもらって以来大好きになったサボテンをとにかく集めていたと言います。自分の部屋は足の踏み場もないくらいサボテンで埋め尽くされている少年時代は、中学生になって色気付いて一旦終了となります(笑)。
塊根植物との出会いは知り合いの事務所。
「見た瞬間に、サボテン少年だった頃に一瞬でフラッシュバックして、その場で購入させてもらったんです。そこから調べまくり、1ヶ月で200鉢くらい買い込むほどのめり込んだ。事務所に置ききれなくなって、バルコニーのある事務所に引っ越すことに。好きすぎて並べてインスタグラムにアップしたら、買いたいとメッセージが来るようになって。試しに売ってみたら、1分で100万円くらい売れた!そこから、実店舗を作ってみようと店舗にもなる事務所に引っ越した。」
これが5、6年前のこと。はじめはビジネスになるとは思いもせずに、好きで好きでたまらなくて写真を撮っていただけ。でも、これが仕事に繋がっていくのは“好き”という情熱、そしてその“好き”を形にするために必要なのが周到なリサーチなのでしょう。
現在、植物に合うように鉢の開発にも力を入れていて、ここ数年作家さんと共にお取り組みを進めているそう。健さんが発表する鉢は、どれも他にはあまり見かけないものが多く、ファンたちが次の作品の完成を待ち望んでいます。
「植木鉢のみを飾る文化を作りたかった。」
陶芸の世界で鉢というと、底に穴が開いていることもあり、価格も含めてそこまで重要視されているものではありません。陶芸の歴史の中で、価値が高いとされているのは茶器や酒器などが大半です。
「植木鉢の文化を変えたかった。植木鉢だからといって価値が低く見られるようなものではなく、実用品としてだけでなく、ただ飾って眺めるものとしても存在を高められるようにしたい。」
アートキュレターの顔も持つ健さんは、今後アート×植物を広めていくことに注力していきたいと話してくれました。そもそも別々の時期に立ち上げた植物とアートの事業ですが、それを一緒にしていけるよう動いていくそう。鉢にアートを施した、他にはないものがたくさん生み出されそうです。ほとんどの店舗の内装設計も自ら手掛けられてきましたが、今後は若手のクリエーターとのコラボレーションなども楽しめたらと思いを膨らませているようです。
世界中から集められた、流行に左右されることなく常に確かな技術によって作り続けられているアイテムたちがセレクトされた「LOST AND FOUND」。“忘れられてしまった大切なものたちが見つかる場所” という意味のこのジェネラルストアは、様々な業界で活躍する人たちをはじめ、多くの方々の暮らしを豊かにしてくれる実用性と必然性を兼ね備えたアイテムたちをご提案していきます。
今回、お話しをお伺いさせていただいた健さんが、ものを選ぶ時に大切にしていることは、「それを見るだけで気持ちが上がる、気持ちが上がるとパフォーマンスが上がる」 こと。機能性はもちろん、テンションの上がるビジュアルも重要な要素だと言います。
「道具も服も車も、自分がかっこいいなと思えるものを使うことで気持ちが上がる。そのほうがいい仕事ができるに違いないから。」
好きなことをとことん追求し楽しみながら、自分にしかできない自分だけの仕事を作っていく姿は、多くの人のこれからにお手本となるtipsがたくさんあるのではないでしょうか。
横町健/aneaken @aneaken
都内にカフェを5店舗、自身のコーデックス(塊根植物)好きから始まったブランド植物屋BOTANIZEを2店舗運営。アートなどのコレクターとしての顔も持ち、2021年6月には松見坂にてカフェにギャラリーを併設したTHE ROOM AKをオープンさせた。
BOTANIZE @botanize_official
THE ROOM AK @the_room_akunis
行方ひさこ@hisakonamekata
ブランディング ディレクター
アパレル会社の経営、ファッションやライフスタイルブランドのディレクション経験を活かし、食や工芸、地域創生などローカルに通じる幅広い分野で活動中。コンセプトワークや商品開発を通じ、トータルでブランドの価値を創り上げていく。
interview & text by Hisako Namekata
photo by Naoki Yamashita
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