ESSENTIAL TOOLS 2026 平林奈緒美さん×小林和人さん対談 | 小林さんセレクト編:人生には、あってもなくてもいい余白ある道具が必要です。

LOST AND FOUNDオープン5周年企画
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LOST AND FOUNDオープン5周年企画「ESSENTIAL TOOLS 2026」にあわせた、アートディレクター・平林奈緒美さんとセレクター・小林和人さんの対談後編。小林さんセレクト編では、GEFUのピザカッターやオーブン用温度計、漏斗、計量カップ、WESTMARKのオープナー類、Güdeのナイフ、栗炒め用フライパン、RIESSのグリルパンなどを紹介。「あってもなくてもいい余白」を持つ道具の魅力、リサーチの楽しさ、そしてAIにはできない「雑味」や「エラー」を大切にするLOST AND FOUNDのもの選びについて語ります。
平林奈緒美さんと小林和人さん

オープン5周年を迎えた〈LOST AND FOUND〉では、昨年に続いてマーケットイベント「ESSENTIAL TOOLS 2026」を開催中です。〈LOST AND FOUND〉のアートディレクターを務める平林奈緒美さん、セレクターを務める小林和人さんが、それぞれの視点から世界各地のプロユースの道具を選びました。「欠かせない・本質的」を意味するエッセンシャル。専門職の現場で使われる道具に宿る本質的な魅力を、二人がじっくり語らいます。二人の審美眼から語られる利便性、デザイン性、そして道具を使うたのしさ。それぞれの道具の魅力についてじっくりとお話しいただきました。前後編でお届けします。

GEFU Pizza cutter MONZAを手にする小林和人さん

余白があるものを揃えていこうというメッセージ

小林さん:今回は編集的な目線で集めてみました。

平林さん:昨年、小林さんがセレクトしたウエストを測るメジャーはユーモアがあってとても良かったですね。私は普通のメジャーとして愛用しています。

小林さん:それはうれしいです。今回、まず注目したのがドイツのキッチンツールメーカー「GEFU(ゲフ)」の製品です。「Pizza cutter MONZA」はカバーを外すとローラーブレードのようになっているピザカッター。こういった専門道具にはどこか惹かれるものがありますよね。ピザパーティーに呼ばれて、ポケットからパッと小道具として出したらモテそうじゃないですか?

平林さん:蓋が閉まった状態がとても可愛い。

小林さん:蓋があることで持ち運びができます。

GEFU Oven thermometer MESSIMO

平林さん:ぜひピザパーティーやりましょう。

小林さん:やりましょう!ピザ屋さんでは必須の道具かもしれないけれど、我々のような一般の生活者にとってはあってもなくてもいいものでしょう。けれどこういう余白があるものを揃えていきましょうというメッセージです。同じようにオーブン用の温度計ですが、これはもう完全にビジュアル先行でセレクトしたものです。インジケーターが温度を正確に表示することに集中していて、摂氏と華氏両方が表示されています。温度帯もグリーン、イエロー、オレンジと分かれている。オーブンの中で引っ掛けて使ったり、置いて使ったりとどちらでも使えます。こんな腕時計があってもかわいいなと思うんですけど。

GEFU Bottling funnel VERSARE

今回はバイヤーモードで並べた姿を俯瞰して考えました

小林さん:そして「Bottling funnel VERSARE」はただの漏斗ではなく、付属のストレーナーで濾しとることができます。先端部は取り外しができるので収納もしやすい。ありそうでないかなという存在です。

平林さん:これもいいですね。

小林さん:平林さんにはスープをたくさん作るときにぜひ使っていただきたい。

平林さん:円錐形ですべてが網の漉し器だと、中身が溢れてしまうんです。一度濾したうえで漏斗にいれる必要があるんですけど、これは一度にできてしまいますね。

GEFU Measuring jug METI

小林さん:そしてこちらのメーカーにも計量カップ「Measuring jug METI」があります。表記は液体だけではなく、米、小麦、砂糖などもあるんです。

平林さん:このイラストは角砂糖を示しているんですか。

小林さん:そうなんです。表記がユニバーサルで、ミリリットル、CC、オンス、カップとあります。ドイツの表記で面白いのはTLが小さじ、ELが大さじを示す表記なんです。

平林さん:小さいサイズはショットグラスにもいいかもしれません。

小林さん:今回はバイヤーモードというのか、並べた姿を俯瞰して考えて揃えました。

平林さん:スタイリスト目線ともいえそうです。とにかく、とてもきれい。

小林さん:でも我慢ができなくてピザカッターのようなものも入れてしまいました。今回はよく仕入れのルートを見つけてくれたな、と思うものも少なくありません。とくに平林さんのセレクトは生活者としての実感値に由来する必然性と、旅先での出会いという偶発性が相まった両面からの魅力を強く感じます。僕もそろそろ旅に出たくなりました。

WESTMARK カンオープナーオートマティック

日々の些事を好ましく底上げしてくれる道具を選びたい

平林さん:私は一足先に「ユニバーサルオープナー」を使わせていただいています。これもとてもいいですね。一人暮らしの女性、お年寄りに必需品となりそう。

小林さん:栓をかける部分がテーパー(傾斜)になっているので、どんな径の栓でもはまります。とてもシンプルなものですが、使い勝手がいい。

平林さん:ルックスも私好み。

小林さん:簡潔に削ぎ落としたフォルムが魅力的ですね。これはドイツのキッチンツールメーカー「WESTMARK(ウエストマーク)」の製品で、同じくブランドの「缶オープナー オートマチック」もいいんです。

平林さん:こういうオールドスクールな道具はなんだかひさしぶりに見ました。

小林さん:こういう製品がどんどんなくなっています。このブランドは頑なに質実剛健な雰囲気をキープしている印象です。この「フリーポアラー クラシック」はどうでしょうか。三角フラスコをオイルサーバーとして使うときなど活躍します。

平林さん:私は出の悪いオリーブオイルの瓶はすべてこれに変えています。

Güdeのナイフ

小林さん:こういった道具というのは、日々の些事を好ましく底上げしてくれる気がします。その意味ではドイツのナイフメーカー「Güde(ギューデ)」も色がいいのでおすすめしたい。樹脂を積層させたグリップですが、このサイズ感のナイフがひとつあるとうれしい。

平林さん:このブルーがおもちゃっぽくていいですね。物として飾っておきたい魅力があります。キャンプにも活躍しそう。そしてこの栗炒めのフライパン。これもぜひ栗の食品サンプルとともに飾っていただきたい。意外と軽いんですね。

栗炒めのフライパンを手にする平林奈緒美さんと小林和人さん

小林さん:平林さんがもっているとテニスラケットに見えてきました。日本だったら、これで銀杏を炒めてもいい。用途が明快で、ペラペラな作りもいいんです。

平林さん:ナッツを空煎りするのにも良さそう。栗以外のものを考えてもいいですね。

小林さん:たっぷりと入る大きさなので使い勝手は良さそうです。オーストリアの「RIES(リース)」は日本にもいろいろと製品が入ってきているのですが、今回はオーブンから食卓にそのまま出せる小ぶりなグリルパンやフライパンを紹介します。

平林さん:このまま丸鶏をいれてもよさそう。

小林さん:サイズも3つラインナップしています。

RIESSのグリルパンや計量カップなど小林さんセレクトの道具

商品を調べている時間が楽しい

小林さん:今回はイベントのための物選びですが、実にいろいろな発見がありました。新しい定番に加わるものが出てくるかもしれません。

平林さん:やっぱりキッチンツールは楽しいですね。

小林さん:平林さんは以前、検索しているときが至福の時間だとおっしゃっていましたね。僕もやはり調べている時間が楽しい。たとえば今回は、いろいろな道具の名前を複数の言語に翻訳して、その単語で画像検索するなどしてリサーチをしました。日本語ではなかなかたどり着かないものと出会えます。平林さんはどうされていますか。

平林さん:私は気になったらとにかくどんどん深く掘るタイプなので、パソコンのモニターがウィンドウだらけに。気になったものはサイトを保存し、かつスクショに残しています。インターネットブラウザのリーディングリストが信じられないほどに溜まっていて、デスクトップがスクショだらけで雑然としているのが最大のストレスです……。

小林さん:ミニマムかつすべてが整理整頓されていると思っていた平林さんからそういうお話を聞くとほっとしますね。

平林さん:デスクトップは海外に出た時の飛行機の中で整理をするのが、最近は決まりごとになっています。フォルダ分けをして、キーワード別に分けて。それが至福の時ですね。

ESSENTIAL TOOLS 2026 店頭の様子

人が選んでいる限りはエラーのようなものを大事にしていきたい

小林さん:〈LOST AND FOUND〉はオンラインストアもありますけど、やはり実店舗がベースであることは揺るがないと思います。これを探しにきたという目的に限らず、その隣にあった予期せぬものとの出会いがある場にしていきたいと思い続けています。

平林さん:スタッフみなでコンセプトや名前を考え、小林さんが育ててきた場です。私は小林さんがセレクトされたものを横から眺めながら、あれを入れてくれ、これを入れてくれとリクエストしているだけ。小林さんが言うように、ここにくると目的ではなかった商品が気になって買ってしまうことがよくあります。それは〈LOST AND FOUND〉の大事なところ、本質的なところでしょう。

小林さん:だから時にレモンカバーのような余白の品がとても重要です。ある意味で時代から取り残された製品というか、時代の落とし物というか。〈LOST AND FOUND〉という名前が象徴するように落とし物保管所にありそうなものを大事にしていきたいですね。

平林さん:確かに〈LOST AND FOUND〉みたいな場所になりましたね。

小林さん:だからこそ合点のいくエラー感、余白のある物選びをこれからも続けていけたらいいなと思っています。やはり「雑味」は絶対に排除し尽くしてはいけない。以前に珈琲豆を焙煎している方に聞いた面白いお話で、ある産地の豆を挽くとき、あえて悪い豆、あまり良くない豆も入れることで味に奥行きを出すと。悪い豆をすべて排除するとクリアになりすぎて、味としてのおもしろみがなくなってしまう。選別の際に一回弾いた豆をあえて入れるっていうことで味に立体感が出るという話は、ここのセレクトにおいても大切。ちょっとした矛盾みたいなものを含ませ続けたいですね。

平林さん:インターネットの検索では見つからないものを拾ってくれる場所。わざわざ足を運ぶなら、そういう場所に行きたいですよね。

小林さん:大きな話になりますが人間という存在は矛盾をはらんだ存在であり続ける以上、そこにおかしみ、矛盾、雑味を包摂できる場所が必要だと思います。それこそAIにはできない領域というのは残り続けるんじゃないかなと。だからやはり人が選んでいる限りはエラーのようなものを大事にしていきたいですね。

Interview & Text Yoshinao Yamada
Photo by Hiroyuki Takenouchi

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