ESSENTIAL TOOLS 2026 平林奈緒美さん×小林和人さん対談 | 平林さんセレクト編:プロが使う道具はやっぱり楽しい!
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オープン5周年を迎えた〈LOST AND FOUND〉では、昨年に続いてマーケットイベント「ESSENTIAL TOOLS 2026」を開催中です。〈LOST AND FOUND〉のアートディレクターを務める平林奈緒美さん、セレクターを務める小林和人さんが、それぞれの視点から世界各地のプロユースの道具を選びました。「欠かせない・本質的」を意味するエッセンシャル。専門職の現場で使われる道具に宿る本質的な魅力を、二人がじっくり語らいます。二人の審美眼から語られる利便性、デザイン性、そして道具を使うたのしさ。それぞれの道具の魅力についてじっくりとお話しいただきました。前後編でお届けします。

空港の清掃スタッフが押しているカートにあったスポンジがきっかけ
平林さん:まずおすすめしたいのがマイクロファイバークロス。今回はオーストリアのクリーニング製品ブランド「REZI(レツィ)」とドイツのカーケア製品ブランド「GLART(グラート)」の二社を紹介します。製品の一つは「ピクトグラムクロス」と謳っていますが、ピクトグラムというよりはイラストですね。日本のグラフィックデザイナーが手がけるとおしゃれなピクトグラムにしてしまいそうですが、このダサさがいい。それに英語表記を加えたりしない潔さも魅力です。
小林さん:ある種の突き放した感じが気持ちいいですね。クロスもしっかりと厚みがあり、クッション性もある。たとえばこのシンクのイラストは洗面所で使うということでしょうか。
平林さん:おそらくそうですね。

小林さん:衛生管理の基本的な考えとして「ゾーニング」という手法があります。細菌やウイルスの交差汚染を防ぐために清掃用具を色分けして管理することによって、どのエリアで使用するべきか識別しやすくなるというものです。赤はトイレ、黄は洗面所やシャワールーム、緑はキッチンなど。そして青はオフィスやリビング、というように使用区分が一目で認識できますね。ちなみにこれはどちらで発見されたのでしょうか。
平林さん:ドイツの空港で清掃スタッフが押しているカートに引っかかっていた業務用スポンジが気になったことがきっかけです。色分けされたスポンジにピクトグラムがついているのを見て、気になって探したのですが、そのもの自体を見つけることはできませんでした。代わりにドイツのAmazonで見つけたのがこちら。こういう製品はあまり普通のホームセンターでは売っていません。
小林さん:今、さらっとドイツのAmazonという言葉が出ました。平林さんはAmazonのアカウントを何ヵ国にまたがって所有していますか。
平林さん:おそらく5つかな。先日旅行をしたスイスにはAmazonがなく、ドイツのAmazonで購入したものをドイツの送付先を経由してスイスに転送しているみたいです。
REZI Cleaning Cloth 設備・家具用 1枚単品 BLUE¥528(税込)
REZI Cleaning Cloth キッチン用 1枚単品 GREEN¥528(税込)
REZI Cleaning Cloth トイレ用 1枚単品 PINK¥528(税込)
REZI Cleaning Cloth サニタリー用 1枚単品 YELLOW¥528(税込)
GLART Purpose Cloths 3枚セット¥3,850(税込)
GLART Purpose Cloths 4枚セット¥4,070(税込)

スーパーの一角にある冴えないキッチンコーナーできらりと光っていた
平林さん:続いてドイツの日用品ブランド「Buchsteiner(ブッフシュタイナー)」の計量カップは、ベルリン動物園駅の高架下にある観光客が入らないようなスーパーマーケットで見つけました。その一角にある冴えないキッチンコーナーできらりと光っていたんです(笑)。
小林さん:書体が二つ共存していますね。
平林さん:プロとしては絶対にやれないような自由さがありますね。
小林さん:表記が今ひとつ揃っていない。
平林さん:そうです。担当者が変わったのかな、みたいな緩さがいいですね。とはいえ、これをとても愛用しています。重ねて置いておくとかわいい。ただこの計量カップにはカップ表記がありません。
小林さん:ヨーロッパのレシピはグラムやミリリットルが基本で、厳密な計量にカップ表記を使うことは少ないようですね。
平林さん:私は大きな鍋で大量にスープを作ったりするので1500ミリリットルの大きなサイズは便利です。ただ分量をぴたりと使いたいので他の計量カップで250ミリリットルサイズも調理時に使います。キッチンツールを立てるのにも便利ですね。
小林さん:500、1000、1500の3サイズがあれば基本は困らないと。
平林さん:スタッキングの収まりもいい。それにしても、やはりプロ用の道具は楽しいです。
小林さん:プロが使う道具ですから、簡単に壊れては仕事にならない。ただ頑丈でも機能性が高くないと仕事が捗らない。だから、意味のない味付けをしている場合ではない。無駄な要素を削ぎ落としたうえで、機能や経済効率を考えてつくられているのでしょう。
平林さん:実はプラスチック製のプロダクトは汚くなるので好きではない。けれどドイツや北欧の製品は基準も厳しく劣化が少なく安心ができます。
小林さん:プラスチック製の気軽さ、そのチープな感じがいいというのはわかります。
平林さん:私としては定番を検討してほしいです。
小林さん:そうですね。ミニマムな形で最大限の効果を生み出しているという意味で、これこそエッセンシャルツールと言っていいかもしれない。
Buchsteiner Measuring jug 1,5L¥3,520(税込)
Buchsteiner Measuring jug 1L¥2,530(税込)
Buchsteiner Measuring jug 0.5L¥1,870(税込)

今のアメリカにはない古き良き時代の情緒がある
平林さん:この「Lemon Stretch Wraps」のようなパッケージを見ると、ある意味で勝てないなと思う魅力があります。
小林さん:このヘアキャップのようなものはなんでしょう。
平林さん:これはアメリカで見つけた製品で、カットしたレモンのためのカバーです。私と同じくらいこの製品が好きな友人がいて、二人ともアメリカへ行くたびに互いの分を購入するほどです。日本でもとあるショップで販売されているのを見て、そんなに売れるとは思えないものを扱う姿勢にやるなと感心していました(笑)。
小林さん:こういう製品には心意気を感じますね。他の道具のような切実さではなく余白を感じるというのか。なかったらないでいいもの。だけど、ある意味で無駄なものがどれだけあるかというのが豊かさとも言える。こういう製品を生み出していたアメリカは、今と違って豊かだったのだろうとすら思います。パッケージを見ずにプロダクトだけを見ると医療用具のようにも見えますが、イラストも柔らかいですね。どういう時にお使いですか。

平林さん:レモンを絞る時に種の処理に困りますよね。キッチンで処理してしまうならいいのですが、たとえば魚の付け合わせやレモンウォーターを出す時に使います。パッケージにもひっそりとですが、状況説明があります。
小林さん:パッケージの地の部分にプリントでメッシュ感を表現しているのもいいですね。
平林さん:今のアメリカにはない古き良き時代の情緒があります。販売時にはぜひ半分にカットされた食品サンプルのレモンに被せてほしい。アメリカやヨーロッパのスーパーマーケット、ホームセンターにタイムスリップすることができたら、今は失われてしまったエッセンシャルなものたちが並んでいるに違いないなと考えてしまいます。
小林さん:たとえば鉛筆削りにはアメリカに「ボストン・シャープナー」という定番がありました。木ネジで机に固定してガリガリ削るような無骨な製品です。以前はアメリカで作っていましたけれど、別の企業に買収されてからは、生産国もブランド名も変わってしまいました。メイド・イン・アメリカはどんどんなくなっているのが現実です。
平林さん:でもこのレモンのカバーはアメリカ製。テキサスのダラスで作っているそうです。
小林さん:素晴らしい。これは工場を訪ねてみたいですね。
平林さん:他に何を作っている工場なのかを知りたいですね。これだけだとは到底考えられない。

何かを見つけると、すぐに企業のホームページを見る
平林さん:そしてデンマークの「Solwang(ソルワン)」のディッシュクロスは色も可愛く、生地も厚いのでいいなと思って取り寄せてもらいました。日本でもブランドの取り扱いはあるんだけど、製品のサイズが小さくてどう使っていいのかがわからなくて。食器を拭くには小さい。私は何かを見つけると、すぐに企業のホームページを見るんです。するとラインアップに大きなサイズがあったので、すぐに小林さんへ相談しました。
小林さん:この黄緑もまた、テニスボールの色のようですね。
平林さん:確かに。今回扱うサイズであれば大きな鍋でも拭けます。ニットタイプでタオルの中心部分にループがついているのも私好みです。
小林さん:これはとても使い勝手が良くてびっくりしました。
平林さん:ただ注意してほしいのは、最初に数回洗濯しないと吸水が良くならない。
小林さん:綿特有の油分があるからそうなのかな。
平林さん:色も幅広いですね。
小林さん:先程のマイクロファイバークロスのピンクは少しオレンジがかった色じゃないですか。僕はあの色みが好きなんです。一方で日本製によく見られる桜色や水色のような中間色が苦手で、これくらいパンチの効いた色がいい。淡くても、少しスモーキーなモーブピンクのような色もやはりヨーロッパらしい。微妙な色合いに地域性を感じます。
平林さん:今回は小林さんが割とモノトーンで、私に色があるというこれまでとは逆パターンです。
小林さん:たしかに今回は逆転していますね。
平林さん:ただ、実を言うと先ほどのマイクロファイバークロスはどちらかというとコレクション。マイクロファイバークロスをうまく使いこなせなくて、資料的に集めています。
小林さん:僕は道具だからといって、すべてを使わなければいけないとは思いません。日本民藝館に収蔵されているものも、もともとは切実な状況で使うために作られたもの。けれど収蔵されると眺める対象になります。別に使っていないから、だめということはまったくないと思います。ものを観ることでいろいろと吸収していきたいです。
Solwang キッチンタオル ライトスティールグレイ¥2,860(税込)
Solwang キッチンタオル スティールグレイ¥2,860(税込)
Solwang キッチンタオル ダークスティールグレイ¥2,860(税込)
Solwang キッチンタオル レモン¥2,860(税込)

平林さん:あらためて、なかなか日本に入っていない製品は多いですね。
小林さん:特に食品周りの製品は検査をしないといけないなどのハードルがあります。
平林さん:海外の市場で野菜を買った時に入れてくれる袋も、日本にはない伸び感があって。どこで仕入れているのだろうかと気になります。そういうときはその国の飲食関係をやっている友人を作っておくといいのです。ドイツやスイスには免許を持っている人しか入れない業者用のキッチン用品店があります。そこにいろいろなものが揃っている。
小林さん:もう、プロですね。
平林さん:私が今とても欲しいのはドイツやスイスでよく見るコンテナです。サプライチェーン向けに折りたたみコンテナをリースする「IFCO(イフコ)」の製品が有名で、スーパーマーケットではそのコンテナで運んだまま野菜や果物を売り、終わると畳んで回収するシステムがあります。そのシステムに契約しないと手に入らない。スイスの郵便局はオリジナル段ボールが廃止されてこのシステムのコンテナになっていました。日本は一体いつになったらそういったシステムになるんでしょうね。
Photo by Hiroyuki Takenouchi
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