小林和人が選んだもの 「耐熱ガラスの話」

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。

この連載では、LOST AND FOUNDセレクター・小林和人さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。

今回小林さんが話してくれたのは、耐熱ガラスについてです。

急な温度変化にも耐え得るガラス

小林さん:1887年に産業用途向けの「ホウケイ酸ガラス」と呼ばれる耐熱ガラスが登場したそうです。化学薬品に対する耐性、そして急激な温度変化に対する耐性という特性を持ったガラス。通常のガラスを熱すると割れてしまうのは、温度変化についていけないから。
でも今回ご紹介するものたちは、熱による膨張が小さめに抑えられる性質のため、例えば淹れたばかりの熱々のお茶に氷をざーーっと入れても大丈夫なんです。

緊張感とともに直火で湯を沸かす時間

小林さん:まずは「トレンドグラス イエナ」のポットをご紹介しましょう。
もともとドイツに「イエナグラス」という耐熱ガラスの代名詞的ブランドがあって、バウハウスを代表するインダストリアルデザイナー、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトがデザインした製品でも知られており、昔はラウンダバウトでもティーポットなどを取り扱っていました。
2005年に生産終了してしまったのですが、結局金型や設備はそのまま引き継がれ、ドイツとハンガリーで生産を再開させたのがこの「トレンドグラス・ イエナ」です。ブランドの存続にも色々な形態がありますね。
この、ケトルの実験器具的なデザインがとても気に入っています。火にかけたガラスを眺めながら、沸騰する瞬間を待つのもいい時間です。

パーツ全てとその繋がりの秀逸さ

小林さん:続いては持ち手部分が特徴的なデザインの、「イッケンドルフ ミラノ」のティーポットです。こちらも20世紀初頭にドイツで生まれたのですが、90年代からミラノを拠点にしているんですね。イッケンドルフという名前は創業したケルン郊外の地名なのですが、そこにミラノがつくというギャップに個人的には「Paris吉祥寺」を思い出します(笑)。
しかしながら、直線的な実直さと曲線的な優美さの共存がいいですね。蓋や取っ手、そしてストレーナーまでガラス製で、その繋がりがとても綺麗なプロダクトだと思います。
ティーポットは重心が高めのものと低めのものがありますので、好みでお選び頂けたらと思います。

余白を楽しむガラスアイテム

小林さん:ヨーロッパの製品が続きましたが、最後は「小泉硝子製作所」のビーカーです。実は昨年、茨城県猿島にある工場にお邪魔してきました。規格品でありながら、実は職人の方たちによる手吹きなんですね。よく見ると一つひとつちょっとした丸みなどが違うんですよね。ガラスの凛とした姿と、手仕事の細やかさにグッときました。
ビーカーにはシロップやドレッシングを入れたり、広口のものはコーヒードリッパーと組み合わせてなど、色々な用途に使っていただけそうです。どれも立ち姿が綺麗で、置いておくだけでも楽しむことができる。人によって使い道はそれぞれで、そんな余白が良いなと思います。
明治45年に東京都台東区三ノ輪に創業。ホームページにその歴史ある一枚の写真が載っているので是非ご覧ください!https://koizumiglass.co.jp/?mode=f3

今回紹介した耐熱ガラス製品は、元々医療用や実験用で作られたものが多くあります。それらを生活の中に落とし込むと、途端に見え方が変わる。そんな見立て心を誘発してくれる存在かもしれません。
これからやってくる暑い日々、冷房などによる夏冷え対策として敢えて熱めのお茶で迎えるのはいかがでしょう?

<記事内紹介商品>

小林 和人 @kazutokobayashi
1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生 活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。
「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。

interview & text by Sahoko Seki
photo by Naoki Yamashita

※記事に価格の掲載がある場合、表示価格は投稿当時のものとなります。

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