行方ひさこのLOST AND FOUNDなスタイル フードエッセイスト・フードディレクター平野紗季子編 

時代を明るくリードしてくれる様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちが選んだLOST AND FOUNDのアイテムと共にお送りする「行方ひさこのLOST ANDFOUNDなスタイル」。仕事、プライベート共にたくさんのものを見て、真摯に向き合ってきた彼らだからこその、なにかを選択する時の視点やこだわり、ものと向き合う姿勢などを掘り下げていきます。

平野紗希子

1991年、福岡県生まれ。小学生の頃に家族と行ったレストランでの感動体験から食日記をつけ始め、大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり、文筆活動をスタート。雑誌等の連載、ラジオやポッドキャスト番組のパーソナリティー、菓子ブランド「(NO)RAISIN SANDWICH」の代表を務めるなど多岐に渡り活躍中。

今回は特別にREMASETEREDの新商品「REMASETERED FREEZER・OVEN」シリーズのグラタン皿でBASE-CHICさんのラザニアを食べながら、食体験を伝える仕事について、そして食体験の中の1つの要素でもある「食器」についてなど、さまざまなものを選ぶときの基準について話を伺いました。

食体験の喜びを仕事に

行方:日本だけでなく海外も含め美味しいものを求めて飛びまわり、多忙な日々だと思います。紗希子ちゃんだけのかなり幅の広い、決まりのない独自の職業ですよね。お仕事になると考えて各地をまわっていたわけではないと思うのですが、食べることが仕事になると思っていましたか?

平野さん:全然!ただの食いしん坊で。もちろん、今もです。本当に食が好きなだけなんですよ。とにかく四六時中食べることを考えています。今は、お仕事になったなんてありがたいなぁって感じです(笑)。

行方:自分の好きなこと以外はやらないというスタンスかなって感じていました。

平野さん:え、なんかわがままな感じでしょうか……?(笑)大丈夫ですかね。

行方:いやいや、わがままじゃない(笑)好きなことをしている姿は本当に楽しそうに映るじゃないですか。いつも幸せそうなので、きっとそうなんだろうなと思って!

平野さん:それはよかった。大学生の時に食を仕事にしたいなと思って、父親に相談したところ「好きなことを仕事にすると、嘘をつかなくちゃいけなくなるよ。」と言われて。「おぉ!」と一瞬ひるみましたが、だったら「嘘をつかない」をテーマにやってみようと思って。結果として、ピュアな気持ちだけで仕事の循環は作れるんだと実感して今に至ります。

行方:嘘をつかなくちゃいけないような仕事は受けてないってことですよね!

平野さん:そうですね。本当に自分がいいなと思う世界を伝えたいですし、創りたいと思っています。行方さんもそうですよね?SNSで推したくないのに推してるものとか、ないイメージです。

行方:そうですね、好きな順位や優先順位はあるにしても、推したくないものはないですね。いつも好きなことが仕事になっているので、本当にありがたいです。でも、「もっととんがった発信をした方がいい。」とか「もっとジャンルを絞り込んだ方がいい。」とかアドバイスをもらうことも多いので、その度に少し立ち止まって考えてみたりすることもある(笑)。

平野さん:なるほど。そういうアドバイスってどんな方から言われるんですか?

行方:先輩的な人、とか?

平野さん:行方さんのお仕事って具体的な先輩っていらっしゃるんでしょうか。勝手ながら、ワンアンドオンリーなイメージです。

行方:なんとなく、いるような気がする(笑)。ファッションからライフスタイル系に移行された方々かな。私は食べることも大好きだし、工芸とアートも好き。作り手や生産者にも興味があるので、それを掛け合わせたことがしたいのですが、その時々の気持ちを大切にして、決めすぎず極めすぎず臨機応変にやっていきたいなと思っています。

平野さん:すてきですね。私も、食のブランドの経営やディレクションをしたり、その一方で執筆や音声コンテンツなどのストーリーテリングも大きな軸としてあって。仕事の範囲が多岐に渡るので、自分の可能性を狭めずに色々とトライしてみたいなと思っています。父親に「悩んだら緊張する方を選べ」と言われてきたのもあって、やったことのない新しいことでも挑戦していけたら。

行方:「悩んだら緊張する方を選べ」って、いいですね。紗希子ちゃんにしかできない独自ジャンルをどんどん突き進んで、その世界をシェアしてもらえたら!待ち望んでいる人がたくさんいると思います。

食体験の中の器

行方:紗希子ちゃんは、料理を盛る器には興味ありますか?

平野さん:ありますよー。私は特に日本料理が好きなのですが、やっぱり器ありきなんだなって思います。そのシーズンにしか出てこない器とかあるじゃないですか。魯山人の“日月椀”っていう器を、今までは写ししか見たことがなかったんですが、とある日本料理のお店で本物がカウンターに6つずらっと並んだんです。その様子があまりにも美しくて。使い込まれているので、器に描かれた月がかすれてきていて、かすれればかすれるほど夜空に浮かんだ月に雲がかかっているように見えて。経年美化というか使えば使うほど、本当の自然ににじり寄っていくものなのかもしれない。魯山人すごい……って感動しました。

行方:それは痺れる!日本料理のお店ってわかる客にしか良い器が出てこなかったりすると聞くので、少しずつ勉強しているけれど、なかなか本物を見る機会がないので、写真を見て思いを馳せてる(笑)。

平野さん:すごい世界ですよね、非言語ゾーンというか。簡単に説明されない膨大な情報量と歴史と文化と職人の技と想いと、その全てが器の中に!と考えると日本料理が一番おもしろいと思ってしまいます。

行方:食いしん坊と言うけれど、本当に食べるだけでなく空間も含め食の全てが好きなんですね!

平野さん:そうですね、味というよりも食体験自体が大好きなんです。コンビニにはコンビニの、ファミレスにはファミレスの、それぞれの良さがあるんですよね。先日、コンビニで何気なく買ったバナナの美味しさに、なんだか改めて感動してしまって、最近はバナナにハマっています(笑)。

行方:コンビニも!ジャンルを問わず高級店からコンビニまで、幅広いお店の良いところに光を当ててくれるところが紗希子ちゃんの懐の深いところだなと思います。

白い器に変えてみたら

行方:ご自分の器はどのような基準で選んでいますか?

平野さん:初めて器を買ったのは実家を出るタイミングだったんですけど、どうやって選んだら良いのかもわからなくて、なんとなくオシャレなセレクトショップに面出ししてある作家ものを購入してみたりしました。なぜかものすごく使いづらい黄土色のものを選んでしまったのですが、そこに何を盛りつけても料理が美味しく見えなくて(笑)。

その後、とあるスタイリストの方とお話しする機会があってその話をしたら、「紗希子ちゃん、それはアクセサリーとか果物を盛る器だね!」って教えてもらいました(笑)。「1つアドバイスするなら、白い器から始めるといいよ。白い器にすると、それだけで料理が美味しく見えるから」とアドバイスもいただいきました。

行方:黄土色から白い器にしたらどうでしたか(笑)?

平野さん:チェンジしてみたら、料理が美味しく見えるし本当に美味しくなりました!そのタイミングでREMASTEREDをいただいたのでさらに白い器コレクションが増えて、日々使っています。

行方:今回ご用意したラザニアのお皿は、REMASETEREDの新商品で「REMASETERED FREEZER・OVEN」といって、オーブンからフリーザーまで活躍できる「PERCEPTION CHINA(パーセプションチャイナ)」という強度のある器なんです。
ボーンチャイナと共に、昭和後期から業務用にも十分にふさわしい強度と洗練されたデザインを求めて開発された器なのですが、こちらはさらに耐熱強度も高いです。
第1弾として発売したREMASTEREDの透き通るような白いボーンチャイナとはまた違った白色なのですが、白い器は少しニュアンスが違うもの同士を合わせても違和感なく使っていただけるかと思います。

ところで、ご自宅ではお料理しますか?

平野さん:一応、家族がいるので(笑)。週に一度は夫のために食事を作ると決めているんです。

行方:美味しいものをたくさん知っている紗季子ちゃんのお料理はとても美味しそう!ぜひ、こちらのFREEZER・OVENも使っていただけたら!

扉を開けたその向こうにある背景をしっかりと読み取り、その喜びを今まで誰も使わなかった香り立つような瑞々しい言葉で、その店ならではの想いや哲学、そして魅力とを分かち合ってくれる。もちろん、お皿の上の美味しい食べ物を食べるだけでなく、生産者を訪れその背景を伝えてくれることもあれば、少し言いずらい食の裏側にスポットを当てたり…。ただ美味しいだけではなく、美味しいの、その先にあるものを知るきっかけとなるような密度の濃い食体験をどんどんアップデートし、シェアし続けてくれています。それは食を通じてレストランとそれにまつわる人々の、過去とこれからの人生と対話をしているようだなと思うのです。

そんな平野紗希子さんが、白い器に変えたことで料理を美味しく感じたように、彼女のこれから綴る言葉や創り出す食体験が、私たちを見たこともない愉しい世界に連れて行ってくれることでしょう。

<記事内紹介商品>

行方ひさこ@hisakonamekata
ブランディング ディレクター

ライフスタイルやウェルネス分野で活動中。近年は食と工芸、地域活性化などエシカルとローカルをテーマに、その土地の風土や文化に色濃く影響を受けた「モノやコト」の背景やストーリーを読み解き、昔からの循環を大切に繋げていきたいという想いから、自分の五感で編集すべく日本各地の現場を訪れることをライフワークとしている。2021年より、地域の文化と観光が共生することを目的とした文化庁文化観光推進事業支援にコーチとして携わる。

Interview & text Hisako Namekata
Photo by Naoki Yamashita

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