「OKUSHIBU ご近所トーク」TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK (TRUNKアトリエ ・橋由香利さん、総支配人・由井賢治さん)

LOST AND FOUND(以下LAF)に来たなら行くべき話題のご近所スポットに、エリアの魅力と自店の紹介をたっぷり話していただく新連載がスタートします。
自然に溢れながら、レストランやカフェ、アパレルや音楽、インテリア、アートなど…様々なカルチャーが心地よく交差する奥渋エリア。私たちがこの場所に店舗を構えたのは、自然の中で商業と住宅が混ざり合い、新旧のカルチャーが共存する独自の魅力を持った街だからです。ココに集うプロフェッショナルとエリアの魅力をとことん話してみよう、と奥渋愛とともに始まった連載をどうぞお楽しみください。

記念すべき初回を飾るのは、東京における今年のビッグトピックスと言えば!9月にオープンした「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK」です。LAFから徒歩1分、緑豊かな代々木公園に隣接し、1Fには一般利用も可能なレストラン「PIZZERIA e TRATTORIA L'OMBELICO」が常に賑わいを見せ、オープンからわずか2ヶ月ほどで、すでに奥渋エリアの新名所となっています。

そもそもTRUNK(HOTEL)は、2017年に東京・渋谷区神宮前に1軒目をオープン。渋谷と原宿を繋ぐ「キャットストリート」と言うと、ストリート感が強くカジュアルなイメージがある中、当時日本にはまだ知られていない”ブティックホテル“の先駆けになれたら…という想いで作られたのだそう。高いクリエイティビティを持ったホテルが突如現れたことで、キャットストリートの客層が変わったと感じた方も多いはず。

そんなTRUNK(HOTEL)が代々木公園の目の前にオープンしたということで、TRUNKアトリエ・橋由香利さんと、総支配人・由井賢治さんにお話を伺いました。

――そもそも何故代々木公園の目の前という場所を選んだのでしょうか。

橋さん「TRUNK(HOTEL)がブランドとして展開していく中で、ストリートとは違う見せ方、表現にチャレンジできるときだと考えました。
代々木公園の自然をふんだんに盛り込み、リラックスやくつろぎを前面に出そうと企画していたのですが、よくよく歴史や文化を紐解いていくと、クリエイティビティの高い小さな店が多かったり、アートギャラリーがあったり、でも昔ながらの銭湯があったり…TRUNK(HOTEL)が持つ創造性と掛け合わせたら面白いのではないかと。そこで、コンセプトに『Urban Recharge』を掲げて、くつろぎと刺激の共存・共生という意味を込めて、この場所にホテルを構えることが決まりました」

――同じ名前を冠しながら、TRUNK(HOTEL) CAT STREETとは異なるストーリーを描いているということですね。

橋さん「はい。エリアによって全く異なるパーソナリティがあるので、表現しやすくはあります。今回は掲げたコンセプトに対し、ゲストがそれを感じ、クリエイティビティを持って明日への活力につなげてくれたら良いと思っています。ゆっくりリラックスするならリゾートに行けば良いとなってしまいますが、仲間とワイワイ過ごしたり、スタッフと会話を楽しんだり…そういうことによってクリエイティビティが高まる場所になればいいですね」

――実際にホテル作りをする中で、どんなところに気を使いましたか?

橋さん「建築とインテリアデザインに芦沢啓治さん、またインテリアデザインにはデンマークに拠点を構えるデザインスタジオ『Norm Architects』さんとも協業し、我々TRUNK(HOTEL)が持つ「企画力」の融合により唯一無二なホテルを実現させました。
コンパクトな立地でありながらラグジュアリーさを感じさせる都会的な空間を意識しました。一番気を使ったのは、限られた空間の中で、くつろぎだけではなく刺激も大切な要素として感じてもらえるクリエイティビティとは何だろうということ。例えばナチュラルな素材がある中でも、ポイントでラタンやカッパーを使って表情を出しています。またバルコニーには横の柵がありません。垂直のラインを削ぎ落とすことで目の前の緑豊かなビューまで楽しめるという建築の遊び心を取り入れたり、建物全体に意図的な違和感を加えています」

ーーそんな考え抜かれた美しい部屋の中で、実はNIKKO と作った洗面用のカップとタオルトレーを置いていただいているんですよね。

橋さん「はい。以前食器のご提案をしていただいたことがあったんです。
そもそも私たちには“ソーシャライジング”という概念があり、それは等身大に社会に貢献していこうという考え方。TRUNK(HOTEL) CAT STREETではそれがコンセプトにもなっているのですが、ここでもそのマインドは持っています。あまり表には出していませんが、全てのモノづくりのベースになっている考えです。
ニッコーさんでやられているバスライフ事業で、余剰になったタイルを原料化し陶磁器の技術で焼き上げたお皿があるという話を伺い、とても興味がわきました。洗面の陶器ということで、耐久性や口触りの良さを考え、信頼してお願いできるブランドとコラボレーションしたいと思い、カップとタオルトレーを依頼させていただきました」

――なかなか大変な生産だったと伺いました。

橋さん「そうなんです。客室の小さな洗面台に合うサイズと、ハンドタオル2枚が綺麗におさまるサイズをチーム内で考え、焼きあがった際のサイズをお伝えして型から作っていただきました。またニュアンシーな色出しには何度も微調整をしていただきました。生産に1年半以上かかったと思います。石川県で陶器の焼き場や埼玉県のバスライフ事業も見せていただきました」

――他にも部屋に置かれている全てのモノにはストーリーがあるのですね。

橋さん「ニッコーさんとの取り組みと同じように、例えば端材やB級の牛革を使ったティッシュケースやゴミ箱、リモコンケースも全て生活感が出ないようにオリジナルで作ったものです。ドライヤーケースは害獣駆除の対象となったエゾ鹿の革を使って、徹底的に手触りの良さを追求しました。
また、今の時代はミニバーをなくすホテルも増えているようですが、私たちは“Urban Recharge”を表現するべく、ギルティフリーなスナックやCBDが入ったチョコレート、コオロギパウダーが入ったプロテインバーなど、日本ブランドで統一しながら良いものを選んで、美しく見せています。ミニバーの利用が少ないからやめるのではなく、使ってもらえるセレクトをすれば良いと思うんです」

由井さん「TRUNK(HOTEL)というと、カジュアルな印象を持つ方もいると思いますが、考え抜かれたアイデアとデザインには時間もエネルギーもかかっていて、そこから体験する時間も含め、我々はラグジュアリーだと自負しています。例えばミニバーにある棚は各アイテムのサイズぴったりにはまるよう設計しています

――すごい!全てのモノの帰る場所が丁寧に作られていることに驚きます。モノの魅力が最大限にひき出されていますね。購入したいと思う方も多そうです。実際にニッコーと作ったカップとトレーはLAFで購入が可能です。
ホテルづくりにおけるTRUNK(HOTEL)の“遊び心”についても聞かせてください。

橋さん「例えばエレベーターに乗ると1階のボタンには“BIG GYM”という表記があります。ホテル内にジムやスパがあるわけではなく、外に出てもらえば目の前に代々木公園という“ジム”が広がっていますよ、というメッセージを込めています。

ホテルの部屋には『Do Not Disturb』 (起こさないでください)をはじめ、シーツやタオルの交換についてのカードがありますが、私たちはこの3種類を全て、廃棄されるバナナの茎を生地として再活用したバナナクロスを使い、イラストレーターの芳賀あきなさんにイメージに合うイラストを描いていただきました。そんなところに遊び心が表現されているのではないでしょうか」

――さて、オープンから2ヶ月ほどが経ちますが、どんなお客様が来ていますか?

由井さん「1階のPIZZERIA e TRATTORIA L'OMBELICOはローカルな方に楽しんでもらえている印象です。朝は保育園に子供を送った後にママ友と集まったり、昼はビジネスランチやキャッチアップをしたり、夜はご近所の常連さんから誕生日などのオケージョンで…といったように、時間帯、利用用途に合わせて使い分けてくれていますね。
宿泊は、我々がターゲットとしている感度の高い海外の方に来ていただいています。開業時は日本人ゲストのご利用も多くありましたが、現在はすでに海外の方が9割ほどになりました。今年いっぱいでそのくらいの割合になればと考えていましたが、早くもターゲットに届いているようです」

――LAFにも外国人のお客様が増えたように感じます。街が活気づいていますね!

橋さん「蔦屋書店からTRUNK(HOTEL) CAT STREET〜FUGLEN〜LAF〜TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK1階のイタリアンというコースは、外国人の方にもいい散歩道ですよね。渋谷の真ん中を通りながら、様々なカルチャーを楽しんでいただきたいです」

ルーフトップには代々木公園と東京の夜景が一望できる宿泊者限定のインフィニティプールがあります。ジャグジーやファイヤーピットを備え、新鮮なオイスターがずらりと並ぶバーを併設しているとなれば、ミーハーな気持ちを抑えることはできないと思いますが…そんな空間に少しでも身を置けば、モノづくりの真摯すぎるほどの姿勢を感じることも容易にできてしまうホテルです。生きる活力が生まれるはず!まずはTRUNK(HOTEL) YOYOGI PARKとLAFの奥渋散歩、はじめてみては?

TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK (トランクホテル ヨヨギパーク)
住所/東京都渋谷区富ヶ谷 1-15-2
https://yoyogipark.trunk-hotel.com/

interview & text by Sahoko Seki
photo by Naoki Yamashita

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