時代を明るくリードしてくれる、様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちが選んだLOST AND FOUNDのアイテムと共にお送りする「行方ひさこのLOST ANDFOUNDなインテリア」。仕事、プライベート共にたくさんのものを見て、真摯に向き合ってきた彼らたちだからこその、なにかを選択する時の視点やこだわり、ものと向き合う姿勢などを掘り下げていきます。

石井佳苗
株式会社カッシーナ・イクスシーに勤務の後インテリアスタイリストとして独立。インテリアの他、衣食住のライフスタイル提案を中心に、暮らしまわりのスタリングを手がける。主に、雑誌、広告のインテリアスタイリング、住宅メーカーのモデルルームやカタログ、VMD講師等多岐にわたる。2020年7月よりオンラインにてインテリア講座「Heima Home Design Lesson」を始め、国内外の受講者に向けてさまざまな角度から住まいづくりの愉しさを伝えている。
今回は、熱烈なファンが多いインテリアスタイリストの石井佳苗さんをゲストにお迎えしました。LOST AND FOUNDからオススメアイテムを数点選んでいただき、それぞれのポイントや使い方をお話しいただきます。そして私もとても興味のある、心地のよいインテリアにするためのちょっとしたコツや、審美眼の磨き方などもお伺いしていきます。
自分が気に入ったものを選ぶことが心地の良い空間に繋がっていく
石井さんはインテリア誌やライフスタイル誌で見かけないことがないほど大人気です。書籍や広告など多岐にわたってご活躍なのでかなりご多忙だと思うのですが、オンライン教室も主催されていますよね。
石井さん:どこかから頼まれたわけではなく、自分でやってみようと思って始めました。これまで、雑誌などでさまざまなインテリアの提案をしてきました。ですが、本当に読者の方々に伝わっているのかな?と疑問が生まれて。直接伝えられる機会を設けたいなと思ったんです。
直接話してみると、自分では当たり前のようなことも、皆さんにはそうじゃなかったんだってことがわかったり、どんなことで悩んでいるかも分かる。これまでの知識と経験を形にすることで、お役に立てるのであれば、これからも直接お伝えしたいなと思っています。
オンライン教室にはどんなビジョンがありますか?
石井さん:インテリアや暮らしを通して、自身の感性を磨いてほしいなと思っています。
1人1人が愉しみながら、自分の家を好きになって健やかに暮らして欲しいなと。好きなものを使うことで、日々が豊かになっていくと思っています。
使えればなんでもいいやではなく、鉛筆でもなんでも1つ1つ自分できちんと選んだものを使って欲しい。ソファやダイニングテーブルは選べても、細かいものをきちんと選ばないと台無しになりますよって話をするんです。
台無しって言われると、怖いですね!(笑)
石井さん:大きなところだけ一生懸命になって、細かい部分まで気持ちが行き届いていないことが多いんですよね。「これでいいか。」って。本当に自分が気に入っているものを1つ1つ選べるように意識してみるといいですよね。この小さい1つ1つが積み重なることで、気持ちの良い空間に繋がっていくんですよね。
なるほど、そうですよね。私は逆に、小さいものは1つ1つ好きなものを選んではいますが、大物を購入する決意がなかなかできないんです。
石井さん:それはまだ、これが欲しい!というのがないのかもしれない。何年も照明を探しているのに目移りして全く買えない!という方もいらっしゃいます。笑
そうかもしれないですね。1つ欲しいフィン・ユールの椅子があるんですけれど、高価なものですし、ヴィンテージには出会いもありますし、1つだけ買ってもなぁと思ってしまって。
石井さん:1つからスタートするのがいいと思う。ショップで眺めていたものが自分の家にある!というのは、見える景色が変わってくるから。そこからスタートするのも良いですよ。それに、決して高価な物ではなくても、思い入れが深かったりすると、インテリアについて色々と考えるきっかけになりますよね。そんな核になるようなアイテムがあると、インテリアがブレないんです。
使い方は自分次第
今回、石井さんがLOST AND FOUNDから選んだ商品は3点。まずは、WOODLOREのシャツボックスです。紳士靴メーカーから誕生したこのブランドは、愛用品をより長く愛用できるようにという作り手の思いから生まれました。こちらを選んだ理由を教えてください。
石井さん:これはクローゼットの中で使うものだけれど、アイディア次第で色々な使い方ができますよね。調味料を入れたり、細々した物を入れたりするのにも便利な大きさだし。こういうものって、どうしても手軽に買えるプラスティックの物を使いがち。少し高価かもしれないけれど、さまざまな用途で長く使えるアイテムだし、見せる収納ができるという点が良いですよね。
そうですね。子供のおもちゃを入れたり、メイク道具を入れるのにも良さそうです。
次は、小泉硝子製作所のビーカーです。明治45年に東京都台東区で創業した老舗硝子メーカーで、自社内で溶解しハンドメイド&メイドインジャパンの多種少量生産。理化学用、医療用、耐熱、コーヒードリップ用など様々な硝子製品を世に送り出していいます。
石井さん:食卓に出してもいいし、いろんな使い方ができますよね。ハンドクリームやリップクリームなど、可愛い見た目のこまごまとした物、ちょっとした物を収納するのに便利。散らかしがちなアイテムを集めてこのビーカーに入れて、キャビネットの上に置いて魅せる収納にできる。
ハンドクリームは思いつきませんでした!確かに可愛く収納できますね。
最後は、イタリアを代表する調理メーカーOttinettiのローストパン。イタリアならではのデザイン性の高さだけでなく、ボディはアルミ製で熱伝導率が高いのに持ち手は真鍮でできているので熱くならないという機能性もあります。
石井さん:これは、もうとても素敵ですものね。調理してそのままテーブルに出せるし、キッチンにあるだけで気分が上がります。それに、価格がそこまで高くないのも魅力の1つですね。
こちらも1920年創業のブランドで、もう100年も伝統を守りながら調理器具を作り続けています。とにかく軽量で扱いやすいので女性には嬉しいですよね。
審美眼を養うのは、筋トレのようなもの
雑誌などで拝見している石井さんのご自宅は、たくさんのもので囲まれているのに澄んだ空気が流れている印象があります。好きなものに筋が通っているから、物量よりもスッキリ見えるのでしょうか。
石井さん:そう見えているなら嬉しいです。新しく買ったものがある時に、位置を変えたりしています。壁に飾ってあるアートの位置も、たまに架け替えてみたり。あとは、季節ごとにも模様替えをしますし、気分によっても変えているので静止しているわけではないんです。
自分の好きな物を見つける審美眼はどのように磨かれているのでしょうか。
石井さん:目を慣らすことです。国内外問わず、とにかくフリーマーケットやヴィンテージショップ、インテリアショップなどに足を運んで様々な物を見てきました。たくさんの物を見て目が慣れてくると、最初に目に入らなかったものが入ってくるようになるんです。店内を2周3周と周っていくうちに見えてくるものがある、必要なものが探せるようになってきます。そういうのを長年やってきたからというのもあるかな。審美眼を養うには経験あるのみ!筋トレのようなものです。
そんなに興味がなさそうなお店も入ってみたりされますか?
石井さん:そうですね。パッと見て違うと思うこともあるし、そんな中にもなにかある時もあるので入ってはみますね。
暮らしに合わせて家具も循環
石井さんはお引越しが多いですよね。引っ越しをするタイミングはどんな時ですか?引っ越して、新しい家に物理的に合わなくなった家具などはどうされているのですか?
石井さん:自分の気持ちや環境の変化に応じて、自分を縛らずに素直に家も選択していきたいですね。精神的な安らぎを求めて郊外に引っ越した時は、都会の暮らしとは全く違うゆったりとした時間を過ごすことができたし、精神的にも元気になりました。仕事の状況などを考えて、その時その時の自分にあった暮らしを選んできました。
物を少なくせざるを得ない、そんな時はフリマをすることが多いですね。それから、気に入って買ったものの、次の家にどうしても入らないというような家具は古道具屋に買い取ってもらうことも。買ったお店に相談してみるのも良いと思いますよ。
え!買取もしてくれるんですか?
石井さん:古道具屋は、古道具屋業界の中でものがまわっています。店主が手直しして売ったものが、他のお店で売られているのを見たら残念に思うらしいですよ。以前、とある古道具屋で購入したものが次の家に入らないので、それを買い取ってもらって、細長い形のキャビネットが欲しいと注文して購入したことがあります。長期リースしているような感じですね。リサイクル、リユースできる古道具屋さんで物を探すのは、とても理にかなっていると思います。
「洗練されたかっこいいインテリアのスタイリングをするだけでは面白くない。」そうおっしゃる石井さんのスタイリングは、リアルな生活を提案してくれるようなものばかり。まるでそこで暮らしている人の姿が透けて見えるようです。
自分の内側の変化を見逃さず、その時に「好き」という気持ちにかなった物を少しずつ揃えていく。自分の住む場所や身の周りのものも、自分の気持ちに素直にきちんと選んでいくことで、心地が良く素の自分に戻れる場所に出来上がっていくのでしょう。「歴史ある古いものはもちろん、新しいものも好き。」とおっしゃる石井さんと同様に、変わることを愉しみながらいつもチャレンジをしていきたいですね。
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行方ひさこ@hisakonamekata
ブランディング ディレクター
アパレル会社の経営、ファッションやライフスタイルブランドのディレクション経験を活かし、食や工芸、地域創生などローカルに通じる幅広い分野で活動中。コンセプトワークや商品開発を通じ、トータルでブランドの価値を創り上げていく。
photo by Naoki Yamashita
interview & text by Hisako Namekata
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