Apr 04.2022

行方ひさこのLOST AND FOUNDなキッチン - 料理家 坂田阿希子編 -

時代を明るくリードしてくれる、様々な分野にまつわるプロフェッショナルたち。そんなプロたちが選んだREMASTEREDのアイテムと共にお送りする「行方ひさこのLOST ANDFOUNDなキッチン」。仕事でもプライベートでも、たくさんのものを見て、真摯に向き合ってきた彼らたちだからこその、なにかを選択する時の視点やこだわり、ものと向き合う姿勢などを掘り下げていきます。

今回は、料理家であり、代官山の洋食KUCHIBUEのオーナーシェフである坂田阿希子さんをゲストにお招きしました。

坂田阿

料理家のアシスタントや、フランス菓子店、フランス料理店で経験を重ね、独立。1998年より料理教室ほか、雑誌や書籍での活動をスタート。2019年11月に代官山に洋食「KUCHIBUE」をオープン。数々のレシピ本を世に送り出す料理家の活動と、オーナーシェフの活動を両立させている。現在も通常営業のほかに、テイクアウトやオンラインでの全国配送商品の展開など、新たなスタイルでもチャレンジし続けている。

洋食KUCHIBUE 東京都渋谷区猿楽町29-10 ヒルサイドテラスC棟15号
03-5422-3028
https://www.instagram.com/kuchibue.daikanyama/

美しいお料理だけでなく、そこにある豊かな時間が想像できるので、私は料理本が大好きです。実際に作るかどうかは別にして、時間を見つけては眺めています。お風呂にも持ち込んで数時間読むこともあるほど、料理本は私の偏愛アイテムなのです。

そんな大好きな料理本の中でも、一番多く持っているのが坂田さん著書。ビジュアルの美しさだけでもテンションが上がりますが、その美しさが自分の生活にどんな影響を与えてくれるだろう……と常に想像力を掻き立ててくれます。今日は、数多くの料理本を世に送り出し、洋食屋のオーナーシェフでもある坂田さんに、REMASTERED ラウンドプレート26ディーププレート22を使って、白い器に映えるデザートを作っていただきました。

日曜日限定、姉妹シェフ

インタビュー記事で拝見したことがあるのですが、幼少の頃から料理本が好きすぎて出版社に就職したそうですね。

坂田さん:そうなんです、料理の写真が1つの紙の上に乗った「本」という形がすごく好きで、それを作る人になりたかったんです。最初は編集を目指して出版社に就職したんです。でも、誰かをコーディネートして合わせるという仕事が編集だとすると、私は自分ができることを黙々とやっていく方が向いているなと。編集の仕事に憧れがあったんですけど、全てにきめ細やかに気を遣うことはできない。でも、好きなことは突き詰めてできるタイプだなと。あまり深くは考えていなかったんですけど、料理やお菓子を作ることは、すごく楽しいなと思っていました。向いてない!と気がついてすぐに辞めたんです。

はい、2年と書いてありました(笑)。

坂田さん:そう、2年(笑)。

早い判断ですが、でも作ることが本当に好きだったんですね。

坂田さん:はい、作ることは大好きでした。

小学生の時、毎週日曜日は姉と献立を考えて好きなものを作ってもいい日だったんです。平日は「時間がかかるからダメよ。」と言われていたメニューも、日曜日だけは特別に作ってよかった。毎週日曜日のその時間は、1,2年続きましたね。

修行の日々

本当に好きだった料理を仕事にしようと思ったのは、いつ頃だったんでしょう?料理家のアシスタントをされた後、フランス菓子とフレンチレストランで修行をしたと伺いましたが、なぜお菓子とお料理、両方の修行をされたのでしょうか?

坂田さん:最初は、お菓子作りに没頭したんですよね。料理というよりは、お菓子を作ることが楽しくて仕方がなかったので、お菓子屋で働きました。いつも同じスピードとクオリティを当たり前に求められる世界は、とにかく厳しくハードでしたが、鍛えられましたね。2軒のお店で3年ほど修行しました。知識と経験が重なると、だんだんタイミングが体で分かるようになったんです。練習をすると、どんどんできることが増えていく。これが、私には向いていたんですよね。

そのうちに、このレストランで働きたい!と思うシェフが営む、素敵なフレンチレストランを雑誌で見つけたんです。お菓子の技術はすでにあったので、パティシエとして入りました。日本家屋で営む小さなレストランだったので、スタッフも全部で4人ほど。なんでもしなくてはいけない状況だったので、お菓子だけでなく、お料理も少しずつするようになったんです。そこはプロヴァンスのお料理で、とてもおもしろかったけれど偏りもあったので、その後に正統派なフレンチレストランでも修行しました。

自分に根付いているもの

洋食屋をしようと思ったのはいつごろからだったのですか?

坂田さん:洋食屋さんをするとは、少しも思っていませんでした。でも、洋食に行き着く味わいの深さというか、奇をてらった材料を使うわけでも高級食材を使うわけでも、ハーブやスパイスをふんだんに使うわけでもないのに、なぜこんなに美味しいんだろう。そこには、明治時代から日本人の創り上げてきた素晴らしい歴史もあって、白いごはんに合うように考えられている。その背景がすごく大好きなんです。

フランス料理の歴史より、白いごはんに合う、日本人が考案した洋食の歴史に惹かれたんですね。

坂田さん:そう、自分に根付いてる感じ。

父がすごく洋食好きだったので、子供の頃から家族で通っている洋食屋さんがあったんです。休みの日や家族の記念日、お祝い事などで出掛けるのは全て決まった洋食屋に通っていました。洋食の香りや雰囲気、全てが幸せな思い出で、全く嘘がないんですね。

クラシックなフランス料理も大好きだけれど、白いごはんが好きな私が1番やりたい料理、それは洋食だなという感じがして。自分に合っていて、自分のやりたい料理とブレていないという気がします。

思い出と共にベーシックに行き着いた

坂田さんの料理本をたくさん持っているのですが、さまざまなジャンルの本を出されてますよね。特に洋食のイメージがあまりなかったのですが、料理家としてと洋食屋のオーナーシェフとしてでは、ご自分の中では違いますか?

坂田さん:そうですね、全く違います!料理家という肩書きだけの時も、自分が伝えたいことってなんだろうってずっと考えていました。料理家さんそれぞれにジャンルやカラーがあると思うのですが、私はそこに迷いのようなものを抱きつつやっていて。

それぞれのお仕事に精一杯応えることはもちろんしていましたが、私らしい感じってなんだろうってずっと思っていたんです。ある時、ベーシックなものを美味しく作るというのが、一番自分のやりたいことなんじゃないかって気がつきました。フレンチ寄りのものではなく、ハンバーグやポテトコロッケなどが絶対的に美味しい!というのがいいな、それが私の目指すところなのかなと。

さまざまなところで修行をされて、たくさんの技術を身につけた上で、幼少期の幸せな思い出に戻るんですね!

坂田さん:洋食ってすごく時間のかかる複雑な作り方のものが多いのですが、小さな頃から「デミグラスソースってどうやって作るんだろう」「シチューのソースが茶色くなるのはどうしてなんだろう。」とか、洋食のことは調べてたんですよ。

わぁ、すごいお子さんでしたね。

坂田さん:だから、洋食屋で修行はしていなかったのですが、過去の美味しくて幸せな記憶があったから、お店をやることもお店のメニューを決めることも全く迷いがなかったんです。

ご縁とチャレンジ

KUCHIBUEは、洋食屋をオープンするために物件を探していたわけではなく、出会いだったそうですね。

坂田さん:料理教室のスタジオはずっと探していたのですが、レストランをしたい人を探してるよ、と知り合いから聞いて。お店をするなんて夢にも思ってもいなかったのですが、ご縁でした。東京でこんなに緑が広がって、光が綺麗な場所はないなって。続かないかもしれないけど挑戦してみようかな、人生で一度くらいお店を出してもいいなと思ったんです。で、飛び込んだんです。

本もどんどん出版されていますし、こちらではオーナーシェフとして現場でお料理を作るとなると、ものすごく時間が拘束されて大変ではないですか?

坂田さん:本当にキツイです、死んじゃうかもしれない(笑)。
今までも忙しいと思っていましたけど、そんなの全然比じゃなかった!私はシェフの方々をすごく尊敬しているんです。毎日同じものを同じクオリティで作り続けることって、本当に大変なことですよね。

本当に、そう思います。でも、それが誰かの思い出になるのかもしれないと思うと、より一層素晴らしい仕事ですね。

クラシックでモダンな白

今日はKUCHIBUEではメニューにない、季節のフルーツとプリンをREMASTEREDと合わせていただきました。洋食屋といえば、白い器という思い出ですか?

坂田さん:そうですね、通った洋食店も白い器でしたし、自分の店用に選んだのも全て白い器です。フランスの食器にはまった時期もありましたが、今ではベーシックな白いお皿って、クラシックだし現代的なモダンさも持ち合わせていて、すごく素敵だなと思うようになりました。白い器って、ベーシックで可愛らしく懐かしさもあるのに現代的なところもあって愛おしいですよね。

REMASTEREDの器はいかがでしたか?2枚重ねて使うとレストランでいただくプリンのようなクラシック感もプラスされて、スペシャル感が増しました!

坂田さん:REMASTEREDの器は、海外のものに比べて「白」の色味に少し黄色みがあるのでより優しいし、料理に合うと思います。フォルムが柔らかくて、リムの幅も絶妙!形もフラットですごく使いやすいですね。

フランスなどヨーロッパでは白に青みがかった還元磁器が昔から使われていますが、REMASTEREDは、酸化磁器のNIKKO FINE BONE CHINA製で、暖かみのある優しい白色が特徴的なのです。

日々、ベーシックを磨く。

知識と技術の両方を日々磨いていくこと、ベーシックやスタンダードを大切に、日々アップデートさせていくこと。そして、自分の基盤となるルーツや思い出を大切にすること。坂田さんのお話しを聞いていると、LOST AND FOUNDやREMASTEREDのコンセプトにとても近くて、忙しさに忙殺されて忘れがちな大切なことを思い出させてくれます。

全ての工程の理由を説明できないと料理家とはいえないと、坂田さんがとあるインタビューで答えていました。その通りだと思います。選択とその理由、そしてそれに対する想い、それを説明できてはじめてプロだと思うのです。

「KUCHIBUEをはじめて、お叱りを受けることもあるけれど、直接お客様から感想や意見が聞けることが、とても貴重なことだと感じる」と坂田さんは微笑みながら話してくれました。誰かの思い出は、もう始まっていますよね。

<記事内紹介商品>



行方ひさこ@hisakonamekata
ブランディング ディレクター
アパレル会社の経営、ファッションやライフスタイルブランドのディレクション経験を活かし、食や工芸、地域創生などローカルに通じる幅広い分野で活動中。コンセプトワークや商品開発を通じ、トータルでブランドの価値を創り上げていく。

interview & text by Hisako Namekata