Dec 08.2021
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行方ひさこのLOST AND FOUNDなキッチン -Mardi Gras 和知 徹シェフ前編-

時代を明るくリードしてくれるプロフェッショナルたち。そんな様々な分野にまつわるプロたちが「LOST AND FOUND」から気に入ったアイテムを選び、そこに彩りを添えてくれます。たくさんのものを見て選んできた彼らだからこその、物を選ぶ時のこだわりや、ものと向き合う姿勢を行方ひさこが掘り下げていきます。

和知 徹 シェフ

1967年兵庫県淡路島生まれ。辻調理師専門学校フランス校を卒業し、ブルゴーニュの一つ星「ランパール」で研修。帰国後は「レストランひらまつ」へ入社、在籍中にパリ二つ星「ヴィヴァロア」で研修する。飯倉片町「アポリネール」で料理長を務めた後に退職。1998年六本木「祥瑞」のオーナー勝山晋作氏が銀座にオープンさせた「グレープガンボ」で立ち上げから料理長を務める。2001年「マルディグラ」をオープン。フランス料理にとどまらず、世界各国の料理を独自のフィルターに通した「和知料理」には定評がある。特に肉のスペシャリストとして、雑誌、テレビ、セミナー、イベントを多数こなすほか、カフェやレストランのメニュープロデュースも手掛ける。

今回は食のプロ、Mardi Gras和知 徹シェフをゲストにお迎えしました。

私が和知さんと出会ったのは10代後半にバイトしていた、その当時にしてはまだ珍しかったフレンチレストランでした。その頃のレストランは、今では考えられないほど厳しい男性社会で、厨房には近づいてはいけないような雰囲気が漂ってくることが多かったように思います(笑)。そんな中でバイトは私だけだったので呑気なもので、みなさんに可愛がっていただいていました。

和知さんにはプライベートでも仲良くしていただいていて、食事に連れて行ってもらったり、料理のアドバイスをいただいたりしていました。独立されてからも交流は続き、お店のエプロンやTシャツを制作させていただいたり、最近ではプロジェクトでご一緒したりしています。

今日は、その当時にはなかなか聞けなかった、ものを選択するときに大切にしていることなどをお伺いしていきます。

自分を試したくて、世界に飛び出した

和知さん:かつて働いていたレストランはとても良い待遇で働かせていただいていたので、不満があるわけではなかったんだけど、『もっとやってみたい!』と挑戦したい気持ちが湧いてきて、とにかく外の世界に飛び出して自分がどこまでできるか試してみたかったんだよね。
とりあえずNYに行って、そこでお店をはじめてみたいという漠然とした想いがあった。ただ、行ってみたらお店をオープンするのにはビザや事務的なことなど、とにかくハードルが高すぎて断念することに。そこから、世界を周って色々見てみようかなと。

独立にあたって綿密なプランを立てていたのかと思ったのですが、思いの外行き当たりばったりなお答えが返ってきました(笑)。
チャレンジしたくて飛び出して、ダメでもまたそこからチャレンジの旅に出掛け経験を積んだことで今のスタイルが出来上がったと話してくれた和知さんですが、まずは飛び込んでみるという勇気と行動力が素晴らしい!

肉の巨匠と呼ばれて

Mardi Grasといえば、「骨太で豪快な料理」ですが、特に和知さんは「肉」のイメージが強いですよね。SNSの書き込みでは、「銀座の肉料理といえば!」「肉の聖地」などと言った書き込みが多くみられます。シンプルな調理法ながら肉の滋味を極限まで引き出した料理の数々は、インパクト抜群なものも多いのが特徴です。
そもそも伝統的なフランス料理のレストランでシェフをしていた和知さんが、なぜ銀座で肉料理に行き着いたのでしょうか。

和知さん:2000年前後に日本でも狂牛病が出てきて、食材に対する意識が激変したの。レストランの役目についても深く考えさせられる事件だったね。レストランで食事をしてもらうということは、ただ単純にお腹を満たす役割だけではないから、畜産・漁業・農業・暮らしそれぞれとバランスよく付き合っていかなくてはダメだなと思った。
そこで、多くの素晴らしい肉料理があるフランス料理をベースに、バランスの取れた『本当の意味での豊かさ』を表現していこうとMardi Grasをオープンさせたんだ。

素材選びから妥協のない和知さんの信念は、ひとつの食材にとことん真剣に向き合うこと。バランスを取ることは実はすごく難しいことだと思うのですが、和知さんは常に自分の足で出向いて自分の五感をフルに使っているからこそ磨かれた感性とバランスが光るだと思います。

和知さん:このMardi Grasも今年で20年経ったけど、これから先ひょっとして海外で店舗をオープンするかもしれないし、色々な可能性をなくしたくないと思ってるんだ。
プロデュースをする店舗や関わるプロジェクトも同じ。いつも可能性を大きく持っていたいから、Mardi Grasと同じことはしない。その場所や環境に合わせて、いつでも大きくチャレンジしたいと思ってるよ。

和知さんの挑戦と弛まない好奇心は止まるところを知らないようです。

全てを受け止めてくれる「白」

そんな和知さんは、「とにかく白い大きい器が好きで、オーバルが好き。キャンパスに絵を描くように白い器に彩りを描いていきたい。」 と「REMASTERED」の中から選んだのは「オーバルプレート39」「オーバルプレート13」 でした。

和知さん:お料理が映えるのはもちろんのこと、繰り返しチャレンジする料理を全て受け止めてくれるのは、結局は白い皿。土っぽい陶器が流行ったりカラフルなプレートが流行ったり流行り物は色々あるけれど、結局何年かするとみんな白いプレーンな皿に戻るものなんだよね。

それは、全てのバランスを整えて研ぎ澄まされたゆえに到達したもの。
Mardi Grasのお皿は、少しだけ和知さんの好きな黄色いものやウッドがありますが、そのほとんどが白いプレーンなもの。いつでも料理は思いっきりチャレンジしたいから、器はそれを大きく受け止めてくれる「白」が良い。
なるほど、「白い器」は、全てのチャレンジを受け止めてくれる懐が深い存在というわけですね。

今回の器を彩るために作ってくださったのは、カラフルなお野菜たちとラムのグリル。一度に豪快に焼いて大きな一皿を作ってくださいました。

彩が豊かなだけでなく、シンプルながら一皿でバランス良く、様々な食感や味が楽しめる見た目も大満足な一品です。小さなオーバルには、食感の違いを楽しめる副菜が3種並びました。

次回、簡単なレシピと共にちょっとしたコツなどをお届けしますので、そちらもお楽しみに!

Mardi Gras
東京都中央区銀座8-6-19 野田屋ビルB1F
03-5568-0222

行方ひさこ@hisakonamekata
ブランディング ディレクター
アパレル会社の経営、ファッションやライフスタイルブランドのディレクション経験を活かし、食や工芸、地域創生などローカルに通じる幅広い分野で活動中。コンセプトワークや商品開発を通じ、トータルでブランドの価値を創り上げていく。

interview & text by Hisako Namekata
photo by Naoki Yamashita