ESSENTIAL TOOLS 2025 目利きたちの見立て|スタイリスト・田中 美和子さん編

「LOST AND FOUND」オープン4周年を記念したマーケットイベント「ESSENTIAL TOOLS 2025」が、TOKYO STOREで盛り上がりを見せている中、皆さんが気になるアイテムについて、セレクター・小林和人さんが信頼する目利きたちに見立てていただきました。小林さんが商品を紹介しながら、対談形式でお届けします。
今回はファッションやインテリア、フードスタイリングなど、ライフスタイル全般におけるシーンのスタイリングを手がけるスタイリスト・田中 美和子さんです。LOST AND FOUNDでは、4年前のブランドローンチという大切なタイミングで、ホームページやSNSのビジュアル用スタイリングを手がけていただきました。

田中美和子/たなか・みわこ

スタイリスト
ファッションからインテリアまでライフスタイル全般のスタイリングを手がける。 雑誌、広告、TVCMなどの撮影のスタイリングの他、ディスプレイ、住宅や施設などのインテリア、ライフスタイルのアドバイザーとしての仕事もしている。学生時代の恩師の影響もあり始めたスキーが冬の趣味、雪の日が待ち遠しい。

小林さん:「最初に美和子さんに聞きたかったのが、スタイリングにおけるもの選びと自分の生活で使うもの選びの視点はどう違うのかということです」

田中さん:「もの選びの視点はあまり変わらない気がします。描きたいシーンと理想の暮らしの形があまりにも違うことがない限りは、大体のことを私の“好き”で選んでいる気がします」

小林さん:「それは潔いです。 “好き”かどうかって一番ブレない軸ですもんね。特に探していたものじゃなくても、たまたま好きだなと思うものに出会ったら買う方ですか?」

田中さん:「仕事でその時必要でなくても、自分用なら買いますね。とりあえず買う作戦に出ちゃいます。後から用事を与えられるといいなと思って、それを買い物の言い訳のひとつにしています。 『使ってみたいな』『いいな』と思った気持ちは大事にしたいです」

小林さん:「いいですね。自分用にはピンときたものを。今回の企画の中では何がピンときましたか?」

【ガラス瓶】

田中さん:「(ねじ口瓶を手に取り)これ!好きですね。何用なんですか?」

小林さん:「このボトルはおそらく薬品用として使われていたものです」

田中さん:「そうなんですね。私の場合、薬品ボトルだから薬品を入れなきゃいけないということはあまり考えず、『お!いいね!』とピンときたら買ってしまいます。何を入れるか決まってないから、とりあえず格好がつきそうな数だけ買うんです。これはずらっと並んでいた方が好きだと思うものと、1個で大丈夫というものがあります。 どんなシーンというわけでもなく、そのものの持っている姿で決めていますね…」

小林さん:「パッと思い描けるというのが、“スタイリスト脳”ですね」

田中さん:「いやいや、お買い物の時はみんなそれぞれ何かを想像していると思いますよ。その機会が多いか少ないかくらいかと思います」

【導電シリーズ】

田中さん:「この(導電)シリーズも好きです。実際に別のものにはなりますがこのポリタンクは水を入れて玄関のドアストッパーとして使っています。持ち手があるから移動しやすいんです。家と事務所用に二つ持っています。ソフトなのでドアあたりもやさしくていいんです」

小林さん:「ドアの気持ちを考えるなんてやさしいですね」

田中さん:「(笑) ものの移動が多いせいか、梱包のくせからか、ものの気持ちになることは無意識にやっていると思います。作業中、たまに物に謝ったりして…。このタンクは玄関ドア用なので、ほぼ毎日使っています。私の場合、『行ってきます!』のときの仕事道具の量が多く手がふさがるので、玄関のドアはドアストッパーをしてフルオープンにします」

小林さん「それはスタイリストならではの使い方ですね。
さらに、ドアストッパーとして使うときはおそらく水を入れてるでしょうから、断水した時にトイレにその水を流したりと、防災用品としても活躍しそうですね」

田中さん:「確かに災害時にもいいですね。これは何用のハサミですか?医療用みたいですね」

【ハサミ、シャーレ】

小林さん:「これは元々料理用ハサミです。『Matfer(マトファー)』という調理道具メーカーから出ていますが、同じイタリアの『Premax』というハサミ専門メーカーが製造を手掛けています」

田中さん:「ハサミやナイフなど、刃物が好きですし業務仕様やプロ仕様のものも好きです」

小林さん:「物質としてキラッとするような、ひんやりする物の魅力っていうのは確かにあるかもしれませんね」

田中さん:「このシャーレは家でピアス入れたりするのに良さそう。本来の使い方はさておいて、違う世界のもの、遠い世界のものを合わせることも好んでします」

小林さん:「文脈が全く異なるもの同士が並んだ時の面白さは、僕も大好物です」

【ブロアー】

田中さん:「ブロアーも家で使っています」

小林さん:「お仕事の現場からの流れですか?」

田中さん:「はい。撮影の現場で知りました。ほこりを飛ばすのが気持ちいいですよね。好きな作業です。お誕生日の時に博多人形をいただいて、かんざしを挿していたり、扇子を持っていたりでとても細かい作りの人形なんです。人形の頭の上から順に風をふきかけて綺麗にするのにとても活躍しています」

小林さん:「ぴったりな使い方ですね。表面が少し毛羽立った素材のシルバニアファミリーにも良さそう(笑)」

田中さん:「いい!いいですね。友人の引っ越し祝いにも贈ったことがあります。レコードプレイヤーやパソコンなどの機械のお掃除にもいいかなと思いました。これは本当に一家に一つあって良いものです」

小林さん:「確かに引っ越し祝いはいいですね。美和子さんのまわりはオーディオ好きも多くいらっしゃりそうですし」

【晒(さらし)】

田中さん:「この『吉田織物』の晒、愛用しています。あとで分かったことなのですけれど、ここの工場は私の通学路からみえる場所にありました」

小林さん:「そうなんですね!美和子さんは晒を何に使っているんですか?」

田中さん:「まず手ぬぐいですね。手拭いサイズに切るだけです。幅に合わせて正方形に切ったものはお客さまが来たときのお手拭きに使います。縁の細いところにハサミで切り込みを入れればあとは手でさくことができます。使いつづけ、最後は掃除に使います」

小林さん:「無駄がなくて素晴らしいですね」

田中さん:「蒸し器、出汁を濾すときにも使えますよ。カッテージチーズを作る際の水切りにも。キッチンに置いてあり、用途に合わせて使うときに割いては使っています。着物を着る際にも使いますね。なので 着物道具を納めているところにも置いてあります。下校時の『シャンシャン シャンシャン」という音が懐かしいです。懐かしさも加わって、抱きしめるほどの愛用品です」

小林さん:「織り機の音が原風景のなかにあるというのは素敵です。そして今も美和子さんの日常を、あらゆる面で晒がサポートしてくれているのですね」

【顕微鏡用スライドガラスケース】

田中さん:「これも気になります。これは何ですか?」

小林さん:「もともとは顕微鏡のスライドガラスを保管・郵送するケースです」

田中さん:「私だったら何を入れるかな。でも、デザインが好きだから買って家に置いておき、あるときふと役目が見つかる。そんな役目がまだないお買い物もします」

小林さん:「『これだ!』っていう役目が見つかると気持ちいいですよね」

田中さん:「最高です。 このケースのように医療用や厨房用品、実験用品などは、衛生面安全面の基準をクリアしてできているでしょ う。その点から、家に持ち帰るとキッチンで口に含む物に使って良いという私なりの基準が作れるので、実際の用途とは違っていても使いやすく使える範囲がぐんと広がりますね」

小林さん:「確かに、切実な状況で使われるものに求められる基準の高さゆえの安心さというのはありますよね。それが汎用性の高さに繋がってくるのでしょうね」

田中さん:「そうなんです。医療用や厨房用アイテム、実験道具などはデザイン的にも優れている気がします。ちょっとしたラインひとつとっても、“かわいい”という理由ではなく、必要であるという絶対の理由があってできていることが多い気がします。そういったことを知ることができるとさらに魅力的に見えてきます」

田中さん:「それ(マルチストール)は四角いので好きです」

小林さん:「整然と収納できますしね」

田中さん:「整然は理想的ですね。雑然としている、積み上がっていて崩れそうなさまも大好きです。私の家の整然といえば、容器を全部入れ替えるんですよね。例えば洗濯洗剤でも何でも大容量を買ってきて、別の容器に入れ替えます。冷蔵庫の中のものも買い物をしたらまず丸裸に。野菜のフィルムやビニールテープなど冷蔵庫にしまう前にすべて剥がします。調味料は瓶に移し変えます。整然さ作りです(笑)。キッチンの道具は毎日よく動くので、先に整然さの仕込みをしています。瓶や入れ物、箱を使い仕分け、徹底的にやっています。趣味のひとつですね」

小林さん:「『整然さの仕込み』、いいですね!そうすることで断然働きやすくなりそうですね。
お話を伺っていると、ここに並んだ道具の無駄のない佇まいと美和子さんのテキパキした動きが頭の中でリンクするようです。そして、かなり具体的な使い方をいくつもお聞きすることができておもしろかったですね。この記事を読んでくださった皆さんが『そういう使い方ができるのか』と、その用途を求めて来てくださる気がします」

田中さん:「おすすめは、いろいろな場所から発掘されたなかなか出会う機会がないものだからなおのこと、実際に触って、見て、気になるならば買ってみる。後で用途を考えるということも面白いんじゃないかなと思います」

小林さん:「余白とともに迎え入れて、後で閃くということですね」

田中さん:「閃いた瞬間は最高ですよね。自分なりの使い方を見つけられたら、もの選びがどんどん楽しくなると思います!」

スタイリング同様、ニュートラルで気取らない雰囲気が魅力的な田中さんのお見立てはいかがでしたか?マーケットイベント「ESSENTIAL TOOLS 2025」は、12月8日(月)までの期間限定開催となりますので、店頭でピンとくる出会いを是非体験してみてください。

Interview & text by Sahoko Seki
Photo by Yui Okado

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