JOURNAL

小林和人が選んだもの「フライパンの話」

小林和人が選んだもの「フライパンの話」

2021/11/19

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUNDセレクター・小林和人さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回小林さんが話してくれたのは、Turkの「プレスパン」についてです。 機械と人の、共同作業 Turkといえば、もともとハンドメイドのフライパンが有名ですが、今回はあえて機械生産のシリーズを選びました。NIKKOの洋食器は機械でピシッと生産されていますが、実はどの工程でも、最後は必ず人の手と目で厳しいチェックが行われています。機械と人の、共同作業。このプレスパンにも、同じ規格で揃った気持ちよさがあり、機械と作り手で仕上げるという生産工程がNIKKOの製品にリンクしています。ハンドメイドのものよりやや軽いので使いやすく、キャンプなんかにも持って行きやすいと思います。もちろん、価格的にも買いやすいですしね。 キャンプで、餅を4つ焼きたい ずっとキャンプに行ってみたいと思っているのですが… 直火で28センチのプレスパンに餅を4つのせて、バターでカリッと焼いたら美味しいだろうな(笑)。小さいサイズは目玉焼きとか、このサイズぴったりのパンケーキを焼いたりして。何を焼こうかとワクワクしますね。 見せる収納の迫力と、食欲をそそる姿 このプレスパンは、返しながら炒めるのではなく、じっくりと焼くために使うもの。 持ち手が長く、斜めにスッと立ち上がっているので、持ちやすいです。 日本のキッチンでは収納が大変に感じるかもしれませんが、壁にかけて見せる収納をしたら迫力が出ます。テーブルにそのまま出した時の姿は食欲をそそりますしね。 物と人が歩み寄っていく道具 道具らしい道具のひとつ。 使い始めは金タワシや野菜くずなどで“焼きならす”工程が必要です。そうやって表面の鉄粉やオイルなどが取り除かれ、油膜ができることでサビづらくなるんです。決して親切な道具とは言えないかもしれないけれど、慣れていくと使いやすい。オートマ車ではなく、マニュアル車のような感じ。物と人が歩み寄っていく、そういう道具かなと思います。 便利、手軽、簡単…そんな言葉が飛び交う時代だが、 少々大変だとしても、丁寧に手をかけてあげることで、良い“顔つき”になってくる。これが小林さんの言う、物と人の歩み寄りだ。一緒に時を重ねるごとに、愛情がどんどん強くなっていくはず。 長く、愛し続けてもらいたいフライパンの話。 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko Sekiphoto...

小林和人が選んだもの「フライパンの話」

2021/11/19

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUNDセレクター・小林和人さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回小林さんが話してくれたのは、Turkの「プレスパン」についてです。 機械と人の、共同作業 Turkといえば、もともとハンドメイドのフライパンが有名ですが、今回はあえて機械生産のシリーズを選びました。NIKKOの洋食器は機械でピシッと生産されていますが、実はどの工程でも、最後は必ず人の手と目で厳しいチェックが行われています。機械と人の、共同作業。このプレスパンにも、同じ規格で揃った気持ちよさがあり、機械と作り手で仕上げるという生産工程がNIKKOの製品にリンクしています。ハンドメイドのものよりやや軽いので使いやすく、キャンプなんかにも持って行きやすいと思います。もちろん、価格的にも買いやすいですしね。 キャンプで、餅を4つ焼きたい ずっとキャンプに行ってみたいと思っているのですが… 直火で28センチのプレスパンに餅を4つのせて、バターでカリッと焼いたら美味しいだろうな(笑)。小さいサイズは目玉焼きとか、このサイズぴったりのパンケーキを焼いたりして。何を焼こうかとワクワクしますね。 見せる収納の迫力と、食欲をそそる姿 このプレスパンは、返しながら炒めるのではなく、じっくりと焼くために使うもの。 持ち手が長く、斜めにスッと立ち上がっているので、持ちやすいです。 日本のキッチンでは収納が大変に感じるかもしれませんが、壁にかけて見せる収納をしたら迫力が出ます。テーブルにそのまま出した時の姿は食欲をそそりますしね。 物と人が歩み寄っていく道具 道具らしい道具のひとつ。 使い始めは金タワシや野菜くずなどで“焼きならす”工程が必要です。そうやって表面の鉄粉やオイルなどが取り除かれ、油膜ができることでサビづらくなるんです。決して親切な道具とは言えないかもしれないけれど、慣れていくと使いやすい。オートマ車ではなく、マニュアル車のような感じ。物と人が歩み寄っていく、そういう道具かなと思います。 便利、手軽、簡単…そんな言葉が飛び交う時代だが、 少々大変だとしても、丁寧に手をかけてあげることで、良い“顔つき”になってくる。これが小林さんの言う、物と人の歩み寄りだ。一緒に時を重ねるごとに、愛情がどんどん強くなっていくはず。 長く、愛し続けてもらいたいフライパンの話。 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko Sekiphoto...

小林和人が選んだもの「まな板の話」

小林和人が選んだもの「まな板の話」

2021/07/21

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。この連載では、LOST AND FOUNDセレクター・小林和人さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回小林さんが話してくれたのは、Per Sanfridsonの「バーチ カッティングボード」についてです。 器と地続きのカッティングボード まな板と包丁は、突き詰め始めたら止まらない…深い沼みたいなもの。本来は極めて専門性の高いジャンルだと思います。 でもこのまな板はテーブルの上に出してカジュアルに使える、“器と地続きのカッティングボード”といった、もっと気軽なもの。 キッチンに引っ掛けても、食卓に出しても、はたまたアウトドアでも、どんなシーンのどんな場所でも温かく寄り添ってくれるまな板です。 みられていることを意識していないような物に惹かれる スウェーデン・ダーラナ地方の湖にほど近い工房で、手仕事で作られているそうですが、デザイナーがデザインしたというよりは、もっと“アノニマス”なイメージ。 私はもともと、「どうだ!」とこれ見よがしにデザインされている物よりも、どちらかといえば見られていることを意識していないような物に惹かれます。 作り手の作為が前に出すぎてしまっているようなものは、結局すぐに飽きてしまうんですよね。 でもこのボードのように、作り手の謙虚な姿勢が感じられる物というのは素直な魅力を覚えます。 樺の木のもともとの自然の形(なり)を生かしているので、一つひとつ表情が異なります。 店頭なら選ぶ楽しみがありますし、オンラインなら届くまでの楽しみがありますね。 “ほっこりの落とし穴”にはまらないギリギリのバランス 私が特に気に入っているのは小さいサイズ。チーズをさりげなく並べるだけでも良い。しっかりとした厚みがありながら、この小ささは、探そうと思ってもなかなかないんです。この厚みがあるからこそ、素材感をしっかり感じられ、身近でありながら決して安っぽくならないのだと思います。ハンドメイドの木製品が陥りがちな“ほっこりの落とし穴”にはまらないギリギリのバランスというのは意外に難しいのです。この適度なバランスにより、デザインされていないようで、しっかりとデザインされた一枚が成り立つのだと言えるのでしょう。 「謙虚な姿勢を感じる物」という言葉が印象的。確かにこのまな板は、食材や料理を、そして食卓に並んだ他の器たちを引き立ててくれるような控えめな佇まいながら、まわりをずっしりと受け止めてくれるような懐の広さも感じさせてくれる。 長く使える物を選ぶとき、居心地よく他と“調和”するかを見極めていきたいものですね。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

小林和人が選んだもの「まな板の話」

2021/07/21

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。この連載では、LOST AND FOUNDセレクター・小林和人さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回小林さんが話してくれたのは、Per Sanfridsonの「バーチ カッティングボード」についてです。 器と地続きのカッティングボード まな板と包丁は、突き詰め始めたら止まらない…深い沼みたいなもの。本来は極めて専門性の高いジャンルだと思います。 でもこのまな板はテーブルの上に出してカジュアルに使える、“器と地続きのカッティングボード”といった、もっと気軽なもの。 キッチンに引っ掛けても、食卓に出しても、はたまたアウトドアでも、どんなシーンのどんな場所でも温かく寄り添ってくれるまな板です。 みられていることを意識していないような物に惹かれる スウェーデン・ダーラナ地方の湖にほど近い工房で、手仕事で作られているそうですが、デザイナーがデザインしたというよりは、もっと“アノニマス”なイメージ。 私はもともと、「どうだ!」とこれ見よがしにデザインされている物よりも、どちらかといえば見られていることを意識していないような物に惹かれます。 作り手の作為が前に出すぎてしまっているようなものは、結局すぐに飽きてしまうんですよね。 でもこのボードのように、作り手の謙虚な姿勢が感じられる物というのは素直な魅力を覚えます。 樺の木のもともとの自然の形(なり)を生かしているので、一つひとつ表情が異なります。 店頭なら選ぶ楽しみがありますし、オンラインなら届くまでの楽しみがありますね。 “ほっこりの落とし穴”にはまらないギリギリのバランス 私が特に気に入っているのは小さいサイズ。チーズをさりげなく並べるだけでも良い。しっかりとした厚みがありながら、この小ささは、探そうと思ってもなかなかないんです。この厚みがあるからこそ、素材感をしっかり感じられ、身近でありながら決して安っぽくならないのだと思います。ハンドメイドの木製品が陥りがちな“ほっこりの落とし穴”にはまらないギリギリのバランスというのは意外に難しいのです。この適度なバランスにより、デザインされていないようで、しっかりとデザインされた一枚が成り立つのだと言えるのでしょう。 「謙虚な姿勢を感じる物」という言葉が印象的。確かにこのまな板は、食材や料理を、そして食卓に並んだ他の器たちを引き立ててくれるような控えめな佇まいながら、まわりをずっしりと受け止めてくれるような懐の広さも感じさせてくれる。 長く使える物を選ぶとき、居心地よく他と“調和”するかを見極めていきたいものですね。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

小林和人が選んだもの「コームの話」

小林和人が選んだもの「コームの話」

2021/06/09

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。 今回⼩林さんが話してくれたのは、KENT の「メンズ 折畳式ポケットクリップ付コーム」についてです。 演劇的な瞬間が、日常に抑揚を生む シャツのポケットに刺したコームを取ってサッと、とかす。そういう、ちょっとミュージカル的な仕草って消えつつあるじゃないですか。その“キザな所作”が失われつつあることに、寂しさを覚える今⽇この頃。 演劇的な瞬間が差し込まれることで、平坦な⽇常にちょっとした抑揚が⽣まれたら良いなと。指パッチンまではしませんが(笑)。 あと、⽇頃から思うのが、⾝だしなみがエスカレートすると気合⼊れた⾼校球児みたいに眉⽑整え始めちゃったりして、あそこまでいっちゃうと逆に引いちゃうんですよね。さじ加減が肝⼼というか。逆に髭はいくらでも⼿を⼊れていいと個⼈的には思っています。眉⽑を整えるくらいなら、このコームで髭をグルーミングして欲しいですね。(そう⾔って髭をとかす仕草をする⼩林さん) KENT という歴史あるブランドは、コームに刻まれた⽂字の書体とか、クラシックな感じがいい。コーム⾃体、昔からあるような佇まいなんですよね。頑なに、自分のスタイルを守っていて。物選びにおいては、こういった⼀貫した美意識の軸を持つメーカーに強く惹かれますね。ブランドの価値というのは掘り下げると結局そこに⾏き着くと思うんですよね。 折りたたみ欲が成仏する ポケットコームといえば KENT という認識は持ってはいましたが、この⼆つ折りのコームの存在は新鮮でした。折りたためるという点が、⼀番気に⼊っていますね。実は折りたたみ好きなんです。“折りたたみ”とか“⼊れ⼦”とか…そういうギミックが好き。⼦供の頃、筆箱に何⾯あるかを友達と競ったりしていましたよね。鉛筆削りがあったり、消しゴム⼊れがあったり…そういう隠された仕組みに惹かれます。って⾔っても、このコームの折り畳み機構はバレバレですけどね(笑)。 昔、アニメの超合⾦の玩具を親に買ってもらったら、廉価版だったため変型しないことが後で分かってガッカリしたことがあるんですが、この KENT の折り畳みポケットコームがあれば、その時満たされなかった「折りたたみ欲」が成仏しそうです。 物を選ぶとき、「⽣活に必要不可⽋かどうか」という基準ももちろん⼤事ですが、ささやかな個⼈的欲求を満たすものだったり、⽇常の中のちょっとしたアクセントとなるような・・・、そんな視点も⼤事なのかもしれない。コームを使っている⽗の所作を想像して、イケてる!とニヤケテしまった⽅、⽗の⽇の贈り物にしてみては? <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

小林和人が選んだもの「コームの話」

2021/06/09

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。 今回⼩林さんが話してくれたのは、KENT の「メンズ 折畳式ポケットクリップ付コーム」についてです。 演劇的な瞬間が、日常に抑揚を生む シャツのポケットに刺したコームを取ってサッと、とかす。そういう、ちょっとミュージカル的な仕草って消えつつあるじゃないですか。その“キザな所作”が失われつつあることに、寂しさを覚える今⽇この頃。 演劇的な瞬間が差し込まれることで、平坦な⽇常にちょっとした抑揚が⽣まれたら良いなと。指パッチンまではしませんが(笑)。 あと、⽇頃から思うのが、⾝だしなみがエスカレートすると気合⼊れた⾼校球児みたいに眉⽑整え始めちゃったりして、あそこまでいっちゃうと逆に引いちゃうんですよね。さじ加減が肝⼼というか。逆に髭はいくらでも⼿を⼊れていいと個⼈的には思っています。眉⽑を整えるくらいなら、このコームで髭をグルーミングして欲しいですね。(そう⾔って髭をとかす仕草をする⼩林さん) KENT という歴史あるブランドは、コームに刻まれた⽂字の書体とか、クラシックな感じがいい。コーム⾃体、昔からあるような佇まいなんですよね。頑なに、自分のスタイルを守っていて。物選びにおいては、こういった⼀貫した美意識の軸を持つメーカーに強く惹かれますね。ブランドの価値というのは掘り下げると結局そこに⾏き着くと思うんですよね。 折りたたみ欲が成仏する ポケットコームといえば KENT という認識は持ってはいましたが、この⼆つ折りのコームの存在は新鮮でした。折りたためるという点が、⼀番気に⼊っていますね。実は折りたたみ好きなんです。“折りたたみ”とか“⼊れ⼦”とか…そういうギミックが好き。⼦供の頃、筆箱に何⾯あるかを友達と競ったりしていましたよね。鉛筆削りがあったり、消しゴム⼊れがあったり…そういう隠された仕組みに惹かれます。って⾔っても、このコームの折り畳み機構はバレバレですけどね(笑)。 昔、アニメの超合⾦の玩具を親に買ってもらったら、廉価版だったため変型しないことが後で分かってガッカリしたことがあるんですが、この KENT の折り畳みポケットコームがあれば、その時満たされなかった「折りたたみ欲」が成仏しそうです。 物を選ぶとき、「⽣活に必要不可⽋かどうか」という基準ももちろん⼤事ですが、ささやかな個⼈的欲求を満たすものだったり、⽇常の中のちょっとしたアクセントとなるような・・・、そんな視点も⼤事なのかもしれない。コームを使っている⽗の所作を想像して、イケてる!とニヤケテしまった⽅、⽗の⽇の贈り物にしてみては? <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by...

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

2021/05/13

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回⼩林さんが話してくれたのは、Belmont の「ファイヤースクエアケトル」についてです。 絵になるヤカンですよね。 ありそうでないヤカンを探していたんです。そしたら Belmontという新潟のアウトドア製品のメーカーのヤカンにたどり着いた。ボディからハンドルまで全てステンレスの鏡面仕上げが美しく、⼀⽬で気に⼊りました。 物と形の必然性が直結している“物” ヤカンて、結構場所を取るもの。でもこれはハンドルを折りたためて、重ねて収納もできる。本棚にしまいたくなるくらい。それはまずいか(笑)。 このケトル、初めて⾒る姿ではあれど、どこかの軍の装備品にありそうな…。独⾃のキャラクターを感じながらも、同時に普遍性を感じるんです。それはなぜかというと、そのもの⾃体が必然性を体現しているから。この形もきっと奇をてらったわけではなく、おそらく収納性と熱効率の両立を追求することによって⽣まれた姿なんじゃないかなと、想像できます。そういう物の形と必然性が直結している“物”を選びたいですね。 視点を変えることでさらに光る物 ⼀番気に⼊っているのは、つまみの部分。バネのようにカチャっと折りたためるようになっているのですが、持ち⼿だけが削り出しの真鍮なんです。ソリッドな感じで。ディティールのちょっとしたところで印象が⼤きく違ってきますよね。機能⾯でいうと、底⾯積が広く確保されているので、早く沸くというメリットもちゃんとあります。中に茶こしが付いているので、お茶っ葉を⼊れて煮出し、そのまま冷蔵庫で冷やしても良いですよね。 実はこれ、もともと家庭用として販売されている既存のヤカンをキャンプ用にモディファイした製品なんですが、それをまた敢えて家で使うものとして捉え直すというのがLOST AND FOUND的な道具選びの視点かなと思っています。そうやって視点を変えることでさらに光る物って、世の中には結構あるはずなんです。特にキャンプ⽤品には、掘っていくと⾒⽴て次第で家使いにも良い物がたくさんあるんじゃないかな。 ヤカンて皆さん持っていると思うんですが、これは既に持っているヤカンとは競合しないはず。だから贈り物にもすごくいいなと。サブ的な位置付けの、「⼆つ⽬のヤカン」としても使えると思います。でも、ハンドルは熱くなるので布で持った⽅が良いですよ。 「あり方が自然な物、もともと存在していたかのような顔をしている物を選びたい」これは小林さんの物選びの基準のひとつだそうです。ファイヤースクエアケトルは、考え抜かれた機能性を携え、しかしどこの食卓にもすっと馴染んでしまいそうな佇まいで、私たちの生活を彩ってくれるはず。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko...

小林和人が選んだもの「ヤカンの話」

2021/05/13

ひとつの物について深く探っていくことで、物選びがグッと楽しくなる。 この連載では、LOST AND FOUND セレクター・⼩林和⼈さんが、このお店で選んだアイテムの中から毎回ひとつをピックアップし、とことん話します。今回⼩林さんが話してくれたのは、Belmont の「ファイヤースクエアケトル」についてです。 絵になるヤカンですよね。 ありそうでないヤカンを探していたんです。そしたら Belmontという新潟のアウトドア製品のメーカーのヤカンにたどり着いた。ボディからハンドルまで全てステンレスの鏡面仕上げが美しく、⼀⽬で気に⼊りました。 物と形の必然性が直結している“物” ヤカンて、結構場所を取るもの。でもこれはハンドルを折りたためて、重ねて収納もできる。本棚にしまいたくなるくらい。それはまずいか(笑)。 このケトル、初めて⾒る姿ではあれど、どこかの軍の装備品にありそうな…。独⾃のキャラクターを感じながらも、同時に普遍性を感じるんです。それはなぜかというと、そのもの⾃体が必然性を体現しているから。この形もきっと奇をてらったわけではなく、おそらく収納性と熱効率の両立を追求することによって⽣まれた姿なんじゃないかなと、想像できます。そういう物の形と必然性が直結している“物”を選びたいですね。 視点を変えることでさらに光る物 ⼀番気に⼊っているのは、つまみの部分。バネのようにカチャっと折りたためるようになっているのですが、持ち⼿だけが削り出しの真鍮なんです。ソリッドな感じで。ディティールのちょっとしたところで印象が⼤きく違ってきますよね。機能⾯でいうと、底⾯積が広く確保されているので、早く沸くというメリットもちゃんとあります。中に茶こしが付いているので、お茶っ葉を⼊れて煮出し、そのまま冷蔵庫で冷やしても良いですよね。 実はこれ、もともと家庭用として販売されている既存のヤカンをキャンプ用にモディファイした製品なんですが、それをまた敢えて家で使うものとして捉え直すというのがLOST AND FOUND的な道具選びの視点かなと思っています。そうやって視点を変えることでさらに光る物って、世の中には結構あるはずなんです。特にキャンプ⽤品には、掘っていくと⾒⽴て次第で家使いにも良い物がたくさんあるんじゃないかな。 ヤカンて皆さん持っていると思うんですが、これは既に持っているヤカンとは競合しないはず。だから贈り物にもすごくいいなと。サブ的な位置付けの、「⼆つ⽬のヤカン」としても使えると思います。でも、ハンドルは熱くなるので布で持った⽅が良いですよ。 「あり方が自然な物、もともと存在していたかのような顔をしている物を選びたい」これは小林さんの物選びの基準のひとつだそうです。ファイヤースクエアケトルは、考え抜かれた機能性を携え、しかしどこの食卓にもすっと馴染んでしまいそうな佇まいで、私たちの生活を彩ってくれるはず。 <記事内紹介商品> 小林 和人 @kazutokobayashi1975年東京都生まれ。1999年多摩美術大学卒業後、国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を吉祥寺にオープン(2016年に代々木上原に移転)。2008年には非日常にやや針の振れた温度の品々を展開する「OUTBOUND」を始動。両店舗のすべての商品のセレクトや店内ディスプレイ、展覧会の企画を手がける。「LOST AND FOUND」ではセレクターを務める。 interview & text by Sahoko...