小山薫堂さんの白い器の別の話

2025/01/10

おいしい料理のことを考えるのは、なんとも幸せな時間ではありませんか?器に盛り付けられる料理には、だれかのアイデアや思いやりが込められているもの。想像するとワクワクしますよね。そんな料理に欠かせない、「白い器」の魅力について紹介した小冊子をLOST AND FOUND の店頭で配布中。巻頭インタビューでは、小山薫堂さんが冊子限定で白い器の魅力を語ってくださいました。
ここでは、冊子とは別の話を特別にご紹介します。

小山薫堂

放送作家。脚本家。料亭「下鴨茶寮」主人。
1964年生まれ。「料理の鉄人」「パレ・ド・Z」「リモートシェフ」など、食をテーマにしたテレビ番組を数多く企画。映画「おくりびと」では第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。
雑誌dancyu連載「一食入魂」などの執筆活動の他、地域・企業のプロジェクトアドバイザー、京都芸術大学副学長、農林水産省「料理マスターズ」審査委員、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」の総合プロデューサーなどを務める。2025年大阪・関西万博では、テーマ事業プロデューサーの食担当として、シグネチャーパビリオン「EARTH MART」を企画。

薫堂さん:「白い器といって思い浮かぶのは、誕生日のときに『Happy Birthday』とメッセージを入れてもらう、所謂キャンパスになっているバースデープレートですね。うちは企画会社なので、スタッフの誕生日を大切にしていまして」

と話し始めた薫堂さん。企画の原点は、大切な人の誕生日をお祝いすることだと言います。

薫堂さん:「多くの人が最初に企画するのは多分、お父さんやお母さんや家族、友人の誕生日のお祝いですよね。僕も子どもの頃、凝っていろんなプレゼントをしてきました。あれが企画の原点だと思っているので、会社でも、全社員のバースデーサプライズを企画してもらっています。今40人くらいのスタッフがいるんですけど、毎回一人の隊長が38人を動かしながらやってくれています」

恒例の行事ゆえに、誕生日をお祝いされると分かりながら過ごすスタッフへのサプライズは難しそう!

薫堂さん:「そうなんですよ。そろそろ自分だよな、ってみんな思ってますからね(笑)。それを縫ってやらなきゃいけないんで、本当に難しいと思います。」

薫堂さん:「僕と副社長とで誕生日月のスタッフをちょっといいレストランに連れて行くというのも決まりなんです。どこに行くかも言わずに、フォーマルなのか、服装だけ伝えておいて。みんなどんどん贅沢になってきていて、『明日は焼き鳥だからね』と伝えると、大体『えーー』とがっかりされるんです。あえて一次会で焼き鳥に行った後、二次会で高級なフレンチに行き、シェフに強引にお願いして締めのひと皿とデセールだけ頼んで、すごいワインと楽しむなんていうこともありましたね」

企画のプロ集団が、自分たちのために本気で企画をする。毎回どんな企画だったのかを知りたくなってしまいます。そんなお祝いムードの中で、出演回数の最も多いのが真っ白な器。メッセージや名前が書かれたバースデープレートなのだそう。

薫堂さん:「月に一度はバースデープレートを見ている気がしますね。考えてみれば、白いお皿って、流行り廃りがないし飽きないですよね。やっぱり、シンプルな白いお皿の力はすごい」

薫堂さん:「僕は食事中になるべくお皿を変えない方が好きなんですよ。毎回取り皿を変えるお店もありますが、それを洗わせることに抵抗を感じるんです。白いお皿だったらどんな料理にも、例えばそれがフレンチでも焼きそばでも合うから、変える必要もないですし、特に家で使うなら絶対いいなと思いますね。なんて言いつつ、実は今事務所で皆が使えるお皿がないんですよ。数がそろってちょうど良いものを探せていなくて。結局コーヒーソーサーを取り皿にしていて、食べる度に、こんなこと本当にやめたい!と思っています(笑)」

そう言って、LOST AND FOUNDの店内で、あれこれいろんなタイプの白い器を熟視する薫堂さんでした。アイデアや思いやりが込められた真っ白なバースデープレート。シンプルな器にこそ、人の温かな想いが込められているのかもしれません。

Text by Sahoko Seki
Photo by Kiyoko Eto

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